花は、子孫を残すために葉から進化した生殖器官です。 生殖というのは、なかま(からだと命)をふやすことです。
生物のふえ方には、大きく分けて有性生殖と無性生殖の二つがあります。
無性生殖というのは、性がないこと、すなわち、オスメスがないふえ方のことです。
微生物をのぞく植物の場合、主なものにつぎのようなものがあります。
さし木(さし芽) |
バラやサツマイモなど、かんたんにできます。 |
株分け |
ランなどでよく行われます。 |
種芋(たねいも) |
ジャガイモが有名です。 |
むかご |
ヤマイモやオニユリなど。 |
りん茎(球根) |
スイセンやチューリップなど。 |
根や地下茎 |
ウコン、タケ、レンコンなど。 |
ランナー |
イチゴですよ。 |
これらに共通していることは、子どもは親とまったく同じDNA(遺伝子)になることです。
子供というより、親の体の一部が新しいからだになるのですから。
サクラにソメイヨシノという品種があります。
江戸時代、植木職人が集まった染井村(現在の東京都豊島区駒込)は、全国からたくさんの桜の木を集めており、
そこで人工交配をし、その新種をさし木でふやし、売り出したものです。
ということは?
親のからだの一部をさし木でふやしたのだから、DNAは、まったく同じということですね。
世界中に数え切れないほどのソメイヨシノがありますが、もとは、ぜんぶ同じ木なのです。
このように、無性生殖だと、同じDNAですから、ソメイヨシノのすぐれた性質を受けつぐことができるのです。
しかし、欠点もあるのです。
何かの原因で環境がいちじるしく変わって、それにたえられなくなった場合、同じDNAだから全滅してしまうこと
になるのです。
たとえば、ウィルス感染による病気で絶滅することもあるのです。
そうなったときに強さを発揮するのは、有性生殖です。
有性生殖は、性があることですから、オスとメスの協力によって子孫を残す方法のことですね。
オスが精細胞をつくり、メスが卵細胞をつくって、半分ずつDNAを出し合うのです。
半分といっても、いつも同じ半分を出すわけではありませんから、その組み合わせは膨大なものとなります。
つまり、基本的には同じ生物であっても、細かいところでは少しずつちがう種類が数え切れないほどできるという
ことです。
環境がいちじるしく変化したとしても、それに適応するものが必ずいることになり、その種は生き残ることができ
るわけです。
たとえば、ウィルス感染による病気の場合でも抵抗力を持つものが必ず生き残るから絶滅することはないのです。
オスがつくった精細胞(精子)とメスがつくった卵細胞(卵)がとけあって、生命のある1個の細胞をつくること
です。
精細胞と卵細胞は、生きてないとはいえないけれど、ほんとうの生命ではないということです。
受精して初めて生命が誕生するのです。もちろん有性生殖の場合です。
水がカギ
被子植物の祖先は、海の藻類です。コンブやワカメを想像してください。
海でとってきたワカメを庭に植えても、すぐに死んでしまいます。
水の中でくらしていたのですから、陸上の乾燥にはたえられないのです。
コケ植物を経てシダ植物に進化した植物は、何とか乾燥にたえることができるようになりました。
しかし、ただ一つできないことがありました。
それは、外部の水(雨や露など)なしにはふえることができないことなのです。
受精には水が必要です。精細胞には足がありません。卵細胞までたどり着くにはどうしても水が必要なのです。
動物でも、同じようなことがいえます。
魚類から両生類(カエルなど)に進化しても、卵を産むときには池や川の水が必要でした。
ところが、動物は、卵のからを発明しました。
からの中に池や川の環境をつくったのです。これによって池や川がなくても陸上に卵を産めるようになりました。
もう一つ大切なことがあります。
それは、受精を確実なものとすることです。
海のウニは、オスメス両方が水中に細かい卵と精子を放出します。広い海の中で卵と精子がふれあわなければ受精
できないのです。
さて、植物は、いったいどうやってこのことを解決したのでしょうか。
植物の場合は、動物の場合とちょっとちがうかもしれませんが、基本的には同じです。
動物の卵のからのように、植物の精細胞や卵細胞にもからをつけたのです。
被子植物とは、花が咲き種子でふえ、胚珠が子房におおわれている植物のことです。
生殖細胞の形成
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花粉母細胞のDNAは複製され2倍の量になります。
花粉母細胞は2回減数分裂して花粉4分子になります。
花粉分子は花粉管細胞と雄原細胞に分裂します。 花粉管細胞の中は水で満たされています。 |
減数分裂というのは、DNA量が半分になる分裂です。半分になったDNAをふくむ細胞を生殖細胞といいます。
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胚珠の中にある胚のう母細胞は減数分裂をして4個の娘細胞になり、そのうち一つは胚のう細胞になります。残りの3個は退化します。
胚のう細胞は3回体細胞分裂をし8個の核ができます。そして、それぞれ3個の反足細胞、2個の核をもつ中央細胞1個、卵細胞1個、助細胞2個が形成されます。 |
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花粉がめしべの柱頭につくと、柱頭の突起から出される発芽誘発物質により花粉は発芽します。このことを受粉といいます。
発芽した花粉は花粉管をのばし花柱の中にトンネルをつくっていきます。雄原細胞(精細胞)が通る道づくりです。
雄原細胞は花粉管の中で体細胞分裂を1回し、2個の精細胞になり胚珠めざして流れていきます。
胚のうの助細胞から出される誘引物質により胚珠に導かれるのです。 |
花粉管が到着する前に二つの助細胞のうち1個は退化して消滅します。花粉管の先が胚珠に到達し残った助細胞に進入します。このとき花粉管核は消滅します。
精細胞が進入した助細胞は破裂し、1個の精細胞は卵細胞と受精して受精卵になり、その後、体細胞分裂をくり返し胚になります。
もう1個の精細胞は2個の核をもつ中央細胞と受精して胚乳細胞にになり、分裂をくり返して胚乳になります。
このように胚のうの二カ所で受精をすることから、これを重複受精といいます。
胚乳は胚の成長のための養分になります。胚は植物のからだをつくっていきます。 |
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