第8回 ユリ科の出現 

サルマメ (サルトリイバラ科) 

 学名 Smilax biflora Sieb. ex Miq. var. trinervula (Miq.) Hatus. 
                            中核単子葉植物 ユリ目 サルトリイバラ科 シオデ属
 サルトリイバラ科は、今からおよそ9,800万年前に出現。ユリ科に進化する直前のものではないかと思われます。
 肉厚の葉に5脈がとおっていますが、その間には網状脈があります。
葉だけを見ると、単子葉植物であるか判断しにくいかもしれません。
 葉の幅が、このように広いと、平行脈では、すべての部分に水や養分を運べないことになります。
 だから、基礎単子葉植物や中核単子葉植物の中には、網状脈の植物がまだまだいるのです。
 そして、葉の形は、だんだんと細くなるように進化していきます。
 
 サルマメは、雌雄異株(しゆういしゅ)ですから、雄株(おかぶ)雌株(めかぶ)があります。
 左の写真のものは、雄花(おばな)ですからめしべはありません。
 外花被(がいかひ)3まい、内花被3まい、おしべ6本は、ヤマノイモ目と同じであり、単子葉植物全体の特徴になります。
 花被は、ヤマノイモ目のように膜状で、このあとに出現するユリ科ほど華麗とは、お世辞にもいえません。
 花被は放射相称(ほうしゃそうしょう)で、おしべも放射状についています。
 花のつくりは、ヤマノイモやオニドコロと非常によく似ています。
 しかし、果実の形はまるで異なります。
 ヤマノイモの果実はプロペラのような形でしたが、サルトリイバラ科の果実は丸いのです。ここに進化のあとを確認することができます。

ユリ科の出現  

ユリ科の出現は、サルトリイバラ科とおなじ、今からおよそ9,800万年前です。
 ユリ科の大きな特徴は、根茎や塊茎、鱗茎をもっていることです。
 葉のつき方は、ヤマノイモ目で一部対生の葉をもつ植物があったのに対して、ユリ科ではほとんどが互生で、花茎にも葉がつきます。
 総状花序で、基部に総包片がありません。
 外花被3枚と内花被3枚は共に同質で、サルトリイバラ科がりん片状なのに対して、ユリ科では花弁状になります。。
 おしべは、内側に3本、外側に3本、合計6本です。
 葯は、丁字着葯
 子房の位置は上位です。
 心皮は3で、3室の中軸胎座胚乳が発達しています。
 果実の種類は、さく果です。
 旧ユリ科の多くは、アスパラガス目に移行されています。
 ホトトギス属は、花被が離生し、花は上を向いて咲きます。原始的単子葉植物の性質を引きずっているようです。また、外花被を(きょ)という特殊な形態に進化させました。
 めしべの柱頭が発達し、受粉のしくみが巧妙になりました。
 これに対して、ユリ属は、花被が一部合生し、花は横、あるいは下を向いて咲きます。
 めしべの柱頭は、それほど発達していません。しかし、強い芳香をもつことで昆虫を引きよせ、花粉を大量にはき出します。

ホトトギス 

 学名 Tricyrtis hirta (Thunb.) Hook.  中核単子葉植物 ユリ目 ユリ科 ホトトギス属
 左の写真は、早春に出した初めの葉です。
 こい緑の斑点が目立ち、これだけ見ても、ホトトギスだとわかる特徴です。
 
 左の写真は、秋になって花が咲くころの下部の葉です。同じ植物の葉とは思えません。
 
 左の写真の葉は、花に近い上部の葉です。
 下部の葉は皮針形ですが、上部の葉は、ハート形に近く、葉を抱くようにしています。
 ホトトギスは、成長とともに葉の形まで変わっていくのです。
 花に近い葉はやわらかく、昆虫やその幼虫の大好物です。おいしいのでしょうか?
 ユリ科になると、葉脈はほとんど平行脈のように見えますが、よく観察すると、まだ、多少網目模様になっています。葉の幅もまだ広いようです。
 

 ユリ科が出現してきたころは、甲虫以外のチョウやハチなども栄えていましたが、これらの昆虫には、ホトトギスの花は、どのように見えたのでしょうか。
 ホトトギスの花は、見る人をドキリとさせるような異様な形と色をもっています。
 花被には、どぎついほどの斑紋があります。この斑紋がホトトギスという鳥の胸のもように似ているため、植物の名前もホトトギスになったのです。
 花被片は、外花被3枚、内花被3枚の計6枚です。
 外花被と内花被の区別ははっきりしていません。ユリ科の特徴ですね。
 このもようは、花粉を運んでくれる昆虫を引きつけるためのものです。
 昆虫の目は、わたしたち人間の目ほど発達していないので、人間とは見え方がちがうようです。
 
 花被の外側には毛が生えています。内側には、濃い紫色の斑点(はんてん)が目立ちますが、よく見ると、基部には黄色の()があることに気づきます。
もっと下の方を見ると、丸い袋状のものがあります。何でしょう?
 
 この袋状のものを(きょ)といい、6枚の花被のうち外側の3枚についています。
 これが属名の Tricyrtis(三曲がり)になった原因のものです。
 ちなみに、種小名の hirta は「剛毛のある」という意味です。
 距の中は空洞で、この中に蜜をためます。
 黄斑(おうはん)がはっきり見えます。
 ついでですが、赤ちゃんのおしりにある青いあざは、蒙古斑(もうこはん)といいます。斑というのは、あざのようなもようのことなのです。
 

 この細長い子房と花柱のまわりをおしべの花糸が密着して取りまいているので、外からは子房や花柱が見えません。
 それにしても、ダイナミックな花柱ですね。
 ホトトギスのめしべは初めて見るとわかりにくいので、おしべを取りのぞいて観察しやすくしました。 
 中央の緑色をした部分が子房です。
子房の位置は、花弁のつけねより上ですから、子房上位です。
 子房からは花柱がつきだしています。
 めしべは1本ですが、ほんとうは、3本のめしべが合成して、1本になっているのです。
 3本の花柱と子房の中が3室に分かれていることがこれを裏づけています。
 
 子房からのびているところを花柱といいますが、とちゅうから3本に分かれ、さらに、先端は2つにさけています。
 この花柱の先の部分を柱頭と呼んでいます。

 
 
 表面にビーズのようなものが見えます。
 この突起を腺毛(せんもう)といいます。
 ここに花粉がつくと、分泌物の刺激で花粉が発芽(花粉管)します。
 
 子房の中は中軸胎座で、3室に分かれています。
 中軸胎座は、単子葉植物全体の特徴です。
 胚珠がきれいに並んでいます。これが、やがて種子になるのです。
 
 ホトトギスに花粉を運んでくるのは、マルハナバチです。
 距にたまった蜜をとるために花にもぐりこみます。
 ホトトギスの花には、オスの時期とメスの時期があり、初めにオスの時期がきます。
 おしべは柱頭より少しみじかく、葯は、柱頭のちょうど下側についています。
 オスの時期には、おしべの葯が下を向きます。
 そのとき、もぐりこんできたマルハナバチの背中に花粉がつくのです。
 
 3〜4日たつと今度はメスの時期になります。
 このときは、めしべの柱頭が傘をすぼめるようにたれ下がりますから、葯がかくれ、今度は、マルハナバチの背中についた花粉が柱頭につくことになります。
 絶妙なしくみですね。
このように、進化は花それぞれに特有なしくみをもつように進むことがあります。 
 あとに述べるラン科の植物は、受粉のしくみにおいて、究極の進化をなしとげることになります。
 
 
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