第13回 アマリリス科へ向けて進化はつづく

ますます多様化するアスパラガス目

ツルボラン科

 APGの中でもたびたび変更があり、APGW(2016年)の改訂でようやく従来のススキノキ科はツルボラン科に科名変更され、以下の系統も次のように整理されました。
 系統樹でいうと、ツルボラン科にはツルボラン亜科、ススキノキ亜科、キスゲ亜科の3つの枝があります。
 ツルボラン亜科には、ツルボラン属、シャグマユリ属、ハオルシア属、アロエ属、ガステリア属などがあります。
 ススキノキ亜科には、ススキノキ属しかありません。
 キスゲ亜科には、日本では、ヘメロカリス属(ワスレグサ属)とキキョウラン属があります。

ツルボラン亜科 アロエ属

 キダチアロエ

 学名 Aloe arborescens Mill.   中核単子葉植物 アスパラガス目 ツルボラン科 アロエ属
 中核真双子葉植物であるナデシコ目のサボテン科と同じように、水の少ない環境に合わせた進化をたどってきました。
 いわば、単子葉界のサボテンといったところです。
 キダチアロエは、日本にもっとも多く見られる種類です。キダチは漢字で木立と書きます。茎がのびて立ち上がるようすをよく表しています。 
 
 葉は剣状でやや細く灰緑色をしています。
 キダチアロエは、「医者いらず」と呼ばれるように民間薬の中では群を抜いた効能を有しています。
 庭先などでも、よく見かけるキダチアロエは、じつは、ワシントン条約によって輸出入が制限されています。
 
 キダチアロエは、細長い筒状の花をつけます。
 茶色がかった赤色です。きれいな色とはいえませんが、花の少ない晩秋から冬にかけては、けっこう目立つものです。
 
 植物豆知識
 一般的に乾燥地帯に生息する植物は、からだのどこかに水をたくわえるものが多いようです。
 サボテンなどは、その代表的なものですが、それ以外にもたくさんあります。
 たとえば、ヤシ、スイカ、ブドウなどは、果実に多量の水をふくんでいます。
 ヤシやスイカは真水の少ない海岸地帯、ブドウは雨量の少ない山梨県に多いのはそのためです。
 逆に雨量の多い地方に適したものといえば、イネがあげられます。
 水田だから、からだに水分をたくわえなくてもよいのです。 そのかわり、乾燥には弱いですね。
 
 葉には水分が多く、すぐに多肉植物であるとわかります。
 ちなみに、サボテンは、茎に水を多くふくみ、葉はトゲ状に変化しています。
 葉や茎に多量の水を含む植物を多肉植物と呼んでいます。
 サボテンは、双子葉植物のナデシコ目・サボテン科だけをいいます。
 アロエは単子葉植物のススキノキ科だから、サボテンのなかまではないですね。
 

ススキノキ亜科 ススキノキ属

 ススキノキ

 学名 Xanthorrhoea australis R.Brown   中核単子葉植物 アスパラガス目 ツルボラン科 ススキノキ属
 ススキノキは、アヤメ科からXeronemataceae(キセロネマ科)を経て進化してきました。
 日本語ではススキノキと名づけられていますが、オーストラリアではグラスツリーといわれています。
 グラスというのはイネ科の葉のような細い草のことです。
 ちなみに、幅の広い葉をもつ草のことはハーブというんですよ。もちろん薬草とか薬味とかいう意味もあります。
 グラスツリーというからには、きっと木になるのでしょう。
 何と高さ6mくらいになるそうです。
 写真の右うしろにあるものは、だいぶのびてきています。
 手前のものは、まだ低いですね。
 
 木には針葉樹と広葉樹がありますが、これはどちらともいえないふしぎな木です。
 ススキの葉のように見えます。
 だからススキノキという名前にしたのでしょう。
 うしろに見えるのは、アロエのようです。
 つぎ、行ってみよう!
 

キスゲ亜科 ワスレグサ属

 ワスレグサ属は、おそらく、今からおよそ5,500万年前、ヒガンバナ科と同じころに出現したのではないかと思われます。
 花を見たかぎりでは、ユリ属によく似ていますが、むしろ、次回以降に述べるヒガンバナ科との共通点も少なくありません。

ノカンゾウ

 学名 Hemerocallis longituba Miq.  中核単子葉植物 アスパラガス目 ツルボラン科 ヘメロカリス属
 ノカンゾウは、ユリの花によく似ています。
ユリ属の花と、いったいどこが異なるのでしょうか。
 花被は、外花被の方が少し細く、内花被は、外花被よりも太く、多少ハデで、アヤメ科と逆です。
 外花被はがく、内花被は花弁であるツユクサ科に進化していくことを暗示させます。
 ここまでは、ユリ属とたいして変わりません。
 
 花冠の中央に注目しましょう。
 拡大してみます。
 おしべの数は、6本ですからユリ属と同じです。
 しかし、おしべもめしべも、大きく上向きにそっています。ここが、ユリ属と異なるところであり、ヒガンバナとよく似ているところです。
 チョウのような昆虫がおしべにとまりやすくなります。
 
 ユリ属と異なっている点がもう1つあります。
 花冠の内側からのぞいてみると、子房が見あたりません。
 ユリ目の子房上位と異なり、アスパラガス目のほとんどは子房下位です。
 しかし、ノカンゾウを横から見てみると、6枚の花被片が基部で合生し、細長い筒状に変化していることに気づきます。
 この筒の中に子房があるので、ノカンゾウは、いちおう子房上位になるのです。
 といっても、やはり、ユリ属の子房上位とは異なります。
 子房下位への過渡期といってよいのではないでしょうか。
 

ヤブカンゾウ

 学名 Hemerocallis fulva (L.) L. var. kwanso Regel   中核単子葉植物 アスパラガス目 ツルボラン科 ヘメロカリス属
 ノカンゾウを観賞用に改良したものが野生化したようです。
 単子葉植物の特徴は3数性ですから、花被片数は6枚ということになります。
 しかし、ヤブカンゾウの花被は八重(やえ)です。
 人の手がくわわっているのです。
 八重というのは、どのように考えたらよいのでしょうか。
 左の写真を見ると、おしべが1本しかありません。キスゲ科のおしべは6本のはずです。
 そこで、まわりの花被片を観察することにします。
 
 内側の花被片に葯がついているのが見つかりました。
 葯は、おしべの頭にあるものですから、これが花被片の先にあるということは、この花被片は、おしべの花糸が変化したものであるということがわかります。
 一般に八重咲きというのは、おしべやめしべが何らかの理由で花弁化したものなのです。
 ヤブカンゾウも、おしべの何本かが花被片に変化して八重咲きになったものと考えることができます。
 
 ヤブカンゾウの葉はノカンゾウより幅が広い以外は、ほとんど同じです。
 ユリ科から見ると、だいぶ細長くなってきました。
 茎をもたず、地面から細長い葉をたくさん出すことは、どのようなメリットがあるのでしょうか。
 枝を張ってたくさんの葉を支え
  る必要がありません。
 葉が重なっても、日光が当たる
  表面積の合計はかなり大きいで
  す。
 ふまれても、大きなダメージは
  受けません。 
 直線葉脈のため、葉でつくった
  糖をはやく塊根へはこぶことが
  できます。したがって、葉に糖
  をデンプンとして一時的にため
  ておく必要がなく、余分なスペ
  ースを使いません。 

 

 

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