第22回 根が退化したパイナップル

パイナップル科とイネ科との共通点

 イネ目の植物が、みなイネ科のようになったわけではありません。初期のものには、まだふつうの花があったのです。
 初期のイネ目に、果物のパイナップルで有名なパイナップル科があります。
 パイナップル科の植物が出現したのは、今からおよそ1億1,200万年前のことです。
 年代の測定は非常にむずかしく、DNAの調べ方や考え方は研究者によってさまざまですから、必ずしも正確であるというわけではありません。
 年代はとにかく、パイナップル科とイネ科とは何となく結びつかないような気がします。
 パイナップル科の特徴とは、いったい何なのでしょうか。
 最も大きな特徴は、根が退化してきたことです。岩などにしがみつくだけで、水を吸収するはたらきはありません。まったく根をなくしてしまったものもあります。
 この点については、中核真双子葉植物のナデシコ目サボテン科によく似ています。

 

 ネオレゲリア プリンセプト
 学名 Neoregelia princeps ( Baker ) LB Smith  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 ネオレゲリア属
 パイナップル科の中にもいろいろあって、ネオレゲリア・プリンセプトは写真のように長い花茎(かけい)を出します。
 遠くから花だけを見ると、オウムバナのようにも見えます。
 葉のようすはオウムバナとは異なり、ロゼット状です。
 ロゼットというのは、タンポポの葉のように放射状に広がっている葉の状態のことです。 
 
 パイナップル科は、独自の進化をなしとげました。
 根が退化していく方向へ進化してきたのです。
 砂漠のような水分を確保しにくい環境で進化してきたのかもしれません。
 パイナップルの根は、他のものにしがみつくためのものに変化してきました。
 
 根は地中の水を吸収しなくなります。その代わりに、葉が空気中の水分を吸収するようになります。
 
 ネオレゲリア カロナイナエ トリカラー
 学名 Neoregelia carolinae 'Tricolor'  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 ネオレゲリア属 園芸種
 パイナップル科の特徴の1つに、葉のつきかたや葉の組織があります。葉を観察すると、たくさんの突起が密集しているようすがわかります。だから、葉をさわるとざらざらするのです。
 この突起で空気中の水分を吸収します。また、葉の中の水分の蒸散をおさえます。
 剣状でロゼット状の葉が10〜20枚ほどつきます。その中央に見える赤い花被(かひ)のように見えるのは包葉(ほうよう)です。包葉は、花柄(かへい)の基部につく特別な葉のことです。
 
 エクメア カピサバエ
 学名 Aechmea capixabae L.B.Smith  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 エクメア属
 左の写真は、花茎(かけい)がのびる種類のものです。
 包葉の中にいくつかの花(果実)があります。
 この花と包葉との関係は、ツユクサ科に似ています。
 さらに、イネ科やカヤツリグサの(えい)を暗示させます。
 
 中央部を見ると、包葉にかこまれた花を見つけることができます。
 パイナップルの花のつきかたは肉穂花序にくすいかじょです。
 肉穂花序(にくすいかじょ)は、穂状花序(すいじょうかじょ)の花軸が肥大し、花がめりこんだような形になったものです。
 イネ科は穂状花序が基本ですから、パイナップル科の花序も似ているように思えます。
 
 フリーセア ウィミナリス
 学名 Vriesea viminalis  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 フリーセア属
 平べったいうちわのような花序もあります。オウムバナの花序に似ています。
 左右にたがいちがいに花がついています。イネ科の初期のものも同じような花序です。
 このことは、パイナップル科からイチゴツナギ科に移行していくことを示しています。
 
 フリーセア マーゴット
 学名 Vriesea cv. Margot  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 フリーセア属
 包葉のすき間から花が咲きます。
 まるで花のようにみえますが、包葉なのです。
 この包葉は、イネ科の(えい)に進化していきます。
 花序全体を包む総包(そうほう)はイネ科の包穎(ほうえい)に、1つ1つの花を包む包葉はイネ科の護穎(ごえい)内穎(ないえい)に進化します。
 
 グズマニア インシグニス
 学名 Guzmania cv. Insignis  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 グズマニア属
 原産地コロンビアのグズマニアは、葉の長さが60cmにもなる大型のパイナップル科植物です。
 
 大輪の花が咲いたように見えますが、ネオレゲリアと同じように、包葉が花弁のように見えるだけです。
 虫媒花(ちゅうばいか)から風媒花(ふうばいか)に進化する過渡期に位置するパイナップル科の植物が、どうして、このようにハデな色をしているのでしょうか。
 イネ目は風媒花になって、地味な目立たない花に変わっていきます。
     虫媒花 風媒花 
 
 ハラン アナナス
 学名 Pitcairnia corallina Linden et Andre.  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 ピトケルニア属
 ハランアナナスのように、たれ下がって地をはうような種類もあります。
 
 パイナップル
 学名 Ananas comosus (L.) Merr.  ツユクサ類 イネ目 パイナップル科 アナナス属
 パイナップルの実は、肉穂花序(にくすいかじょ)がふくらんだものですから、たくさんの果実が集まったものであるということがいえます。
 それぞれの花には包葉がついています。
 この包葉は、子房が果実になってもついたままです。
 
 左の写真でトゲ状にみえるのがりん片状の包葉です。
 果実がりん片状の包葉にカバーされているようすは、カヤツリグサ科やイネ科の(えい)によく似ています。
 これも、パイナップル科がイネ目に属する理由の1つといえます。
 パイナップルは、小さな花の集まりで、その実は果実の集まりである集合果ということになります。パイナップルの1つ1つの果実をピップといいます。
 
 果実が熟してくると、集合花の基部と頭に葉が生えてきます。
 頭に生えたロゼット状のものを冠芽(かんが)と呼んでいます。
 
パイナップルのふえかた
 パイナップルは人の手がかかった栽培種ですから、同じ品質のものをつくるためさし芽でふやします。
 花が咲いても自家受粉しません。まわりのパイナップルも、さし芽でふえたのですから、もともとは同じ個体です。
 したがってこれらも受粉をしません。だから、種子はできません。
 ところが、まれに種子ができることがあります。
 これは、遠くで咲いた種類の異なる花の花粉が昆虫によって運ばれ、受粉したと考えられます。
 イネ目は、ほとんどが風媒花として進化をしてきましたが、このように、昆虫が花粉を運んでくることもあるようです。

 


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