第33回  イチゴツナギ連 カラスムギ亜連
小花の数があまり退化していない
 ミノボロ
 学名  Koeleria cristata (L.) Pers.   イチゴツナギ亜科 イチゴツナギ連 カラスムギ亜連 ミノボロ属
 ミノボロは京都府などいくつかの地域では絶滅危惧種に指定されています。静岡ではまだそこまではいっていないようです。 

 ミノは漢字で簑と書き、むかしの雨具のことで合羽(かっぱ)やレインコートのようなものです。ちなみに合羽はポルトガル語での雨具のことです。
 ボロは破れたり、いわゆるボロボロになったものをさすから、ぼろい合羽という意味になるでしょうか。
 
 ボロといわれると何となくそのような感じがします。
 
  ミノボロは、開花前と開花しているときでは、穂のすがたがだいぶ異なります。
 円すい花序なのですが、密生した枝が(かん)にぴったりついているので、まるで穂状花序(すいじょうかじょ)のように見えます。
 開花するときは、枝が開いてすき間ができます。
 
 穂を拡大してみると、(かん)から総状の枝が密生している円すい花序であることがわかります。
 
 1つの枝を取りだしてみます。たくさんの小穂(しょうすい)がついています。このような枝を(そう)と呼んでいます。
 
 小穂(しょうすい)を取りだしてみます。
 (のぎ)はありません。
 第1苞穎(ほうえい)に比べ第2苞穎はかなりの大きさです。
 どちらの苞穎も2つに折れて、その山にあたる部分が盛り上がって(りょう)になっています。とくに竜骨(りゅうこつ)といいます。
 
 竜骨には、するどいトゲが生えています。
 包穎のフチは、無色の広い膜になっています。
 小花(しょうか)は3個あります。
 第3小花は小さくて結実しません。第1第2小花は両性ですから、おしべもめしべもあります。
 
 小穂(しょうすい)から小花(しょうか)を1つ取りだします。
 小花は護穎(ごえい)内穎(ないえい)に包まれています。
 
 開花前の小花を開いてみます。
 3本のおしべと1本のめしべを見ることができます。
 
 おしべは(やく)花糸(かし)とで構成されています。
 さらに葯は2個の葯室からなりたっています。
 葯を支えるのは花糸で栄養の通り道でもあります。
 
 左の写真は、開花前のおしべです。
 棒状のものは花糸(かし)です。
 2つの葯室(やくしつ)葯隔(やくかく)でつながっています。
 花糸は葯隔につながっています。
 
 ミノボロのめしべです。
 子房から2本の花柱がでて花柱の先端あたりが房状に細かく分かれます。花柱の頭だから柱頭(ちゅうとう)といいます。
 これによって風に運ばれてきた花粉をとらえることができるのです。
 イネ科のめしべはたいていがこのような形をしています。
 イネ科は風媒花ふうばいかなのです。
 
 花が終わり、秋になると穂が茶色に染まります。
 
 結実した果実が密集しています。
 
 根を除いた地上の姿です。
 すら〜っとしたところがネズミノオに似ています。
 イネ科の草はみな似ているから見分けるのがたいへんです。
 
 ミノボロの葉です。
 これだけを見ると、ほかのイネ科とよく似ていて見わけがつかないかもしれません。
イネ科の葉は、みな同じように見えます。

  
 ヌカボ
 学名  Agrostis clavata Trinius var. Nukabo Ohwi     イチゴツナギ亜科 イチゴツナギ連 カラスムギ亜連 ヌカボ属
 人家から湿地まで、人の生活している地域に広く分布しています。
 丈は、40〜80cmで、葉身の長さは10〜15cmほどの中型の大きさです。
 円すい花序ですが、枝は開かず密につくので細い総状(そうじょう)花序のように見えます。
 
 よく見ると枝分かれしているのがわかります。総状花序は枝分かれしないから円すい花序になります。
 
 小穂は1小花(しょうか)からなります。第2包穎より第1包穎のが長く、小花は第1包穎の半分くらいの長さになります。
 
 葉舌(ようぜつ)はかなり長い方です。

  
 ヒエガエリ
 学名 Polypogon fugax Steud.    イチゴツナギ亜科 イチゴツナギ連 カラスムギ亜連 ヒエガエリ属
 ヒエガエリは湿地に多い植物です。
 円すい花序で、ななめに立ちます。
 穂の先が濃いむらさき色になるので、意外と目立ちます。
 花が咲くとき、枝は開いています。
 実がなるころは、枝が(かん)に密着して円柱状になります。
 写真で見るとスズメノカタビラに似ていますが、それよりもずっと大きいです。
 
 2枚の包穎にはそれぞれに包穎と同じ長さでむらさき色ののぎがあります。
 包穎のへりにはみじかい毛が生えています。 ヒエガエリは、1個の小花(しょうか)をもちます。
 護穎(ごえい)からは、細いのぎが1本ひげのように出ています。

  
 ハマヒエガエリ
 学名 Polypogon monspeliensis (L.) Desf.    イチゴツナギ亜科 イチゴツナギ連 カラスムギ亜連 ヒエガエリ属
 ハマヒエガエリは、淡い緑色の穂をもちますが、実をもつころには、写真のように赤くなります。
 包穎の3倍ほどの長さののぎをもち、円柱状に密集しています。
 包穎のへりの毛は、ヒエガエリより長い毛がならんでします。

  
 コバンソウ
 学名  Briza maxima L.   イチゴツナギ亜科 イチゴツナギ連 カラスムギ亜連 コバンソウ属
 イネ科の中では、けっこうおもしろい形をしています。
 
 
 このかたまりは小穂(しょうすい)といいます。
 小花(しょうか)が多数集まって、このような形をしているのです。ユーモラスな形ですね。
 小穂をぶら下げている柄は、とても細く、まるで糸のようです。
 
 小穂は、はじめ緑色をしていますが、だんだん色が茶色っぽく(黄褐色)なっていきます。
 
 
 コバンソウという名は、この小穂の形からきています。
 小穂にある小花の数は、まちまちですが、この写真のものは、13〜14個くらいでしょうか。
 一番上のものは、包穎といって、小花ではありません。(ぼう)()のようなものです。
 小穂の下のほうは、細かい毛が生えています。
 
 若い小穂を観察します。
 この小穂は、8個の小花(しょうか)をもっています。
 一番左の2枚は、包穎(ほうえい)で、小花ではありません。
 
 包穎と小花は、同じように見えますが、包穎のほうは、中身がありません。
 白く見えるところは、光が反射しているところです。けっこう、つやがあるのです。
 
 小花が互いちがいに並んでいます。
 表面には細かい毛がびっしりと生えています。
 小花の表面に見えるのは、護穎(ごえい)といいます。
 包穎は小穂を包むもので、護穎は小花を包むものと考えてよいと思います。
 
 小花(しょうか)は、護穎(ごえい)内穎(ないえい)に包まれて守られています。
 コバンソウの内穎は半透明になっています。
 内穎を(やぶ)って中を見ます。
 3本の雄しべが見えます。
 
 拡大します。
 それぞれの雄しべの(やく)は、2個の葯室からなり、それらが背中合わせについています。
 その接合部分を葯隔(やくかく)と呼びます。
 花糸は、葯隔につながっています。
 
 1個の葯を取りだします。葯は2個の葯室から成り立ちます。
 上の葯室には裂け目が見えます。ここから花粉を出します。
 
 雄しべを取りのぞくと、()しべを見ることができます。
 雌しべは、子房(しぼう)花柱(かちゅう)柱頭(ちゅうとう)の3部から成り立ちます。
 イネ科の柱頭は、写真のようにいくつにも枝分かれしており、花粉をとらえやすくしています。
 
 写真は、内穎に包まれている子房です。
 内穎の縁は、狭いひれ状になっています。
 その境目の折れ曲がっている(りょう)竜骨(りゅうこつ)といい、細かい毛がびっしりと生えています。
 
 イネ科の葉は、茎を取り巻くさや状の葉鞘(ようしょう)と細長いふつうの葉・葉身(ようしん)とから成り立ち、その2つの境目には葉舌(ようぜつ)があり、その形状は、いろいろあります。
 この写真では葉舌は見えません。
 
 葉の表側の顕微鏡写真です。
 上が葉の中央よりで、下が葉のフチです。
 葉の全面に小さな突起が見られます。
 フチには、細かい鋸歯(きょし)(ギザギザした部分)があります。(ノコギリ)の歯のようだから鋸歯といいます。
 非常に細かいので、手を切ることはありません。
 
 葉の裏側です。
 表側より白っぽく見えます。
 葉の表にあった突起は、ほどんど見られません。
 葉のフチのきょ歯は、こちら側からは見えません。

 
 ヒメコバンソウ
 学名  Briza maxima L.   イチゴツナギ亜科 イチゴツナギ連 カラスムギ亜連 コバンソウ属
 小さい植物を表す言葉には、スズメノ〜 とか ヒメ〜、ノミノ〜 などがあります。
 ヒメコバンソウもコバンソウより小さいのでヒメコバンソウ(姫小判草)といいます。
 コバンソウは小穂が小判のような形に見えるから、このような名前がつきました。
 葉身(ようしん)には、中央脈がはっきりしないことのほかは特にありません。
 
 
 花序(かじょ)につく小穂(しょうすい)の数は、コバンソウに比べ多く、反対に、小花の数は少ない。これは、より進化していることを示しています。
 円すい花序で、枝は糸のように細く、数回枝を分けます。
 
 光沢のある小穂は、下を向いて垂れます。
 光沢があるせいか、写真の撮影では小穂が白くなりがちです。
 枝が非常に細いので、風があたるとゆれます。
 
 小穂の大きさは、たて横4mmくらいです。
 2枚の包穎が、小花の上に包みこむようにつきます。
 包穎は広げてみると、ほぼ円形で、第1包穎に3脈、第2包穎に5脈があります。
 包穎のへりの部分は膜質でそれ以外の部分は淡緑色、または、多少むらさき色を帯びています。
 
 護穎(ごえい)は袋のようになっていますが、広げるとだ円形をしていることがわかります。
 護穎が袋で奥行きがあるから、ふたになる内穎は護穎に比べて極端に小さいのが特徴です。
 コバンソウの護穎には細かい毛がたくさん生えているのに対して、ヒメコバンソウのほうは無毛です。
 
 葉舌は白色の膜質で、Poa(イチゴツナギ属) と同様にかなり長いです。
 コバンソウ属は、イチゴツナギ連の中では変わった形状に進化しました。
 小さな鈴のような粒が細い糸にぶら下がってゆれているようすは、一目見てそれとわかります。
 進化は、いろいろな形質を生み出すものです。
 

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