第37回  ダンチク亜科 ヒゲシバ亜科 @ 
 ダンチク亜科には、ダンチク属のほかにウラハグサ属やヨシ属があります。

 

ダンチク亜科 ヨシ属  Phragmites 

 セイタカヨシ
 学名  Phragmites karka (Retz.) Trin. ex Steud. .   イネ科 ダンチク亜科 ダンチク連 ヨシ属
  沼や河岸などの湿地に見ることができます。
 高さ3mにもなる大型の草です。
 もともとは、葦と呼んでいましたが、「悪し」ということばに通じるので縁起をかついでヨシにしたそうです。
 ウグイス科の小鳥は、ヨシのしげみに住み、やかましく鳴くので、これらの鳥をヨシキリといいます。
 
 ヨシは水辺に生えます。
 大きいので3mくらいにもなり、その茎は、すだれに使われます。
 同じ水辺に生える大型な似たものにマコモがあります。マコモの小穂にはヨシよりも大きな実がなります。
 パスカルの原理で有名なブレーズ・パスカルの遺稿「パンセ」に、「人間は自然の中で最も弱い一本のアシのようなものである、しかし、それは考えるアシである」というのがあります。パスカルの有名な言葉です。
 思考することが他の動物と異なることを説いたものです。  
 
 ヨシは、かつて日本人の生活になくてはならないものでした。現在でも見かけるものに「葦簀(よしず)」があります。夏の日差しを防ぐためにヨシの茎をすだれのようにしたものです。

 茎から枝が分かれ、さらに小さな枝に分かれる複合花序で、このような花序を円すい花序と呼んでいます。
 小花には白く長い毛が生えています。
 
 大型のイネ科だから穂も大きい。
 重いのか垂れ下がっています。
 
花序の長さは40cmにもなります。
 穂はたくさんの枝に分かれ、多くの小穂(しょうすい)をつけています。
 小穂は、はじめ緑色がしだいにうすい紫色に変わっていきます。
 
 小穂(しょうすい)を観察します
 枝を構成している1本1本が小穂です。
 
 小穂を拡大してみます。
 小穂に緑色の柄がついていることを確認できます。
 小穂は小さい穂ということでいくつかの花の集まりということが推定できます。
 小穂の長さは12〜17cmで、2〜4個の小花が2枚の包穎にはさまれています。
 包穎の長さは、小穂のおよそ半分です。
 
 イネ科の葉は大きさによってどれも同じように見えます。
 ヨシの葉は途中からたれ下がるものが多いのですが、セイタカヨシは、あまりたれ下がりません。
 
 葉舌は非常にみじかく、1mm以下か、ほとんど見えないくらいでしょう。
 

ヒゲシバ亜科 Chloridoideae @

ヒゲシバ亜科はキビ亜科とともに、イチゴツナギ科の中では最も進化したものです。というより単子葉植物の中でといったほうがよいのかもしれません。
 キビ亜科の小穂は2小花をもちましたが、ヒゲシバ亜科の小穂は1〜多数の小花をもちます。
 胚乳が小さく胚が大きいのも特徴の1つです。葉身の組織の断面構造はC4型です。これは、キビ亜科と同様で、他の亜科のC3型より進化しています。断面構造の型は二酸化炭素の固定に影響します。
 固定というのは、空気中の二酸化炭素をグルコース(ブドウ糖)にしてからだに取り入れることです。
このしくみは非常に複雑でむずかしいので、単純に光合成のはたらきで二酸化炭素と水からデンプンがつくられると考えてもよいでしょう。
 ようするに、C4型のほうが光合成の効率がよいということです。
 ヒゲシバ亜科の染色体は、2n=20が基本となります。


スズメガヤ属  Eragrostis

 カゼクサ
 学名  Eragrostis ferruginea (Thunb.) Beauv.   イネ科 ヒゲシバ亜科 スズメガヤ属

 カゼクサ。何とも、いいひびきですね。さわやかな感じがします。
 イネ科の植物は、他の多くの植物とくらべると、変わった特徴があります。
 それは、左の写真でわかるように、ほそながい平行脈(へいこうみゃく)の葉と、花がとくちょうのある()になっていることです。
 葉と穂で、たいていはイネ科だとわかります。
 しかし、イネ科と他の科と区別をすることはできても、イネ科の中の何という名前かまでは、なかなかわかりません。イネ科の植物は、みんなおなじように見えるので、見分けるのが大変です。
 カゼクサの場合、わりとかんたんな見分け方があるので、ぜひおぼえてください。

 
 イネ科の植物の多くは、円すい花序です。
 ちょっと見ると、総状花序(そうじょうかじょ)のように見えるかもしれませんが、枝分かれしているそれぞれに小穂(しょうすい)という小さな総状花序、あるいは、穂状花序(すいじょうかじょ)があるのです。
 こういう花序を円すい花序といいます。
 
 左の写真のようなかたまりを小穂(しょうすい)といいます。
 小穂は、いくつかのかたまりが集まってできています。そのかたまりを小花(しょうか)といいます。
 小穂は、一つの小花でできているものもあれば、二つでできているものもあります。カゼクサのように5〜10個くらいの小花が集まっているものもあり、そのとくちょうがイネ科の植物を見分けるたすけになります。
 この小花、とても花には見えないかもしれませんね。
 だけど、よく見ると、おしべのやくやめしべの柱頭(ちゅうとう)が見えるでしょう?
 
 イネ科を見分けるには、小穂(しょうすい)の観察がなにより大切です。
 カゼクサは、基部に2つの包穎(ほうえい)があります。
 そこからいくつかの小花がたがいちがいについています。
 小花の一番そとがわには護穎(ごえい)があり、その内側には内穎(ないえい)があります。
 この2つの穎におしべとめしべがにつつまれています。
 
 外側の包穎が第1包穎で、内側の包穎が第2包穎です。
 包穎の背にはするどいトゲがあります。
 包穎と護穎は、よく似ていますね。
 しかし、よく観察してみるとちがいがわかりますよ。 
 包穎は、背が1つで、ようするに2つ折りの状態になっています。
 それに対して、護穎は、背が3つあり、内穎をかかえこむようになっています。そして、それぞれの背にトゲがあります。
 この背のことを竜骨(りゅうこつ)と呼んでいます。
 内穎には、竜骨が2つあり、3つ折りの状態でおしべとめしべをつつんでいます。
 
 第1包穎の竜骨をアップした写真です。
 するどいトゲですね。
 
 この小穂は、7個の小花(しょうか)からなりたっています。
 一部の小花からは、おしべの(やく)が外に出ています。
 葯の形は、どのイネ科の植物も似たものが多いです。
 
 1個のおしべをアップしてみます。
 葯は、2個の葯室が背中合わせになっています。
 葯室は、すでに開いてしまって、花粉は残っていませんね。
 糸のように見えるのは、花糸(かし)です。
 おしべは、葯と花糸からなりたっているのです。
 ほとんどのイネ科の植物の小花には、こういうおしべが3個あります。
 
 イネ科の小花を観察するには、開花前が最適(さいてき)です。
 開花前の葯室は、まだ開いていません。
 葯室の中には、花粉がたっぷりと入っていることでしょう。
 
 葯を拡大してみました。
 表面のもようがはっきりと確認できます。
 
 2つの包穎(ほうえい)にはさまれている最初の小花から、もやもやとした糸くずのようなものが見えます。
 これは、めしべの先の柱頭(ちゅうとう)です。
 
 めしべは、胚珠(はいしゅ)をつつんでいる子房(しぼう)と、子房からのびている花柱(かちゅう)と、花柱の先にある柱頭(ちゅうとう)の、3つの部分からなりたっています。
 柱頭の役割は、花粉をとらえることです。
 花粉をとらえることを受粉(じゅふん)といいます。
 イネ科の植物の柱頭は、こんな感じのものがほとんどです。
 
 開花する前の柱頭を観察してみましょう。
 花柱がはっきり見えますね。
 花柱の先には、はたきのような柱頭がついています。
 
 柱頭を思いきり拡大してみました。
 まるいつぶが見えますね。
 これは、おそらく花粉でしょう。
 柱頭に花粉がからまっているみたいです。
 柱頭からは、花粉をとらえるために糖分をふくんだ水が出ているのでしょう。
 
 もう一度花序(かじょ)の一部を見てみましょう。
 小穂(しょうすい)の枝に(せん)が見えます。
 1ページで、「カゼクサの場合、わりとかんたんな見分け方があるので、ぜひおぼえてください」と書きました。
 これが、その答えです。
 小穂の枝に腺があるかないかを調べましょう。
 あれば、まずカゼクサと判断してよいでしょう。
 
 腺を拡大してみました。
 ぬれていますね。
 何か分泌物(ぶんぴぶつ)を出しているようすです。
 成分については、調べていないのでわかりません。
 
 腺の部分を顕微鏡でさつえいしてみました。
 分泌物はあまり出ていなかったので、細胞がよく見えました。
 
 イネ科の植物を観察する場合、小穂(しょうすい)の観察をするとともに、葉鞘(ようしょう)の口部の観察も重要です。
 葉をよく観察すると、茎をとりまいている部分と茎からはなれている部分とに分かれていることに気づきます。
 葉鞘の鞘は、さやという字です。刀のさやという意味です。つまり、茎という刀をさやのようにつつんでいるから葉鞘というのです。
 
 葉鞘から葉身(ようしん)になるところのさかいめ(葉鞘の内側)に葉舌(ようぜつ)というのがあるんですが、この葉舌の形がイネ科を見分けるときに役に立つのです。
 
 しかし、カゼクサの場合、葉舌よりも葉鞘のまわりの毛に特徴があります。
 かなりはでについていますね。この特徴だけでは、カゼクサと決めつけるわけにはいきませんが、腺と毛の両方があれば、おおむねカゼクサと決めつけてもいいでしょう。
 みなさんも、さがしてみませんか?
 
 ニワホコリ
 
 学名  Eragrostis multicaulis Steud.  イネ科 ヒゲシバ亜科 スズメガヤ属
 ニワホコリは比較的小さいので、遠くから見るとほこりのようにみえるから、こんな名前がついたのでしょう。
 
 カゼクサと異なり、小穂の枝に腺はありません。
 花序はしならず直立します。
 
 紅紫色の小穂をつけます。
 

 

inserted by FC2 system