第52回  おしべが減少するのも進化の現れ

極楽鳥(ゴクラクチョウ)のような華麗な花です

 学名 Strelitzia reginae var. regina Banks ex Ait.   ツユクサ類 ショウガ目 オウムバナ科 オウムバナ属
 ゴクラクチョウカ、漢字で書くと極楽鳥花です。ゴクラクチョウという鳥の頭に似ていることからついた名前なのでしょう。
 熱帯の花に特有な原色のはなやかな感じが、花屋さんの人気商品の一つになっており、日本では、温室で栽培され、切り花として利用されています。
 ゴクラクチョウカの祖先は、今から7,800万年くらい前に出現しましたが、ゴクラクチョウカの属するゴクラクチョウカ属は、それより4,800万年ほどあとになってから誕生したものです。今から、およそ3,000万年前のことです。
 ゴクラクチョウカの花を見ると、どれが花弁で、どれがおしべなのかめしべなのかわかりにくく、たいへん変わっている花だといえましょう。
 

 上の写真のものでは、7つの花が確認されました。オレンジ色の部分は、外花被といい、内花被以下の花をつつんでいます。
 粉をふったような緑色の部分は総包です。単に包葉とか包とも呼ばれることがあります。総包は、いくつかの花を包む、あるいは束ねるはたらきをしています。
 左のゴクラクチョウカは、栽培種で学名が Strelitzia reginae var. regina で、ストレリチア レギナエ ワリエタス レギナ と読みます。
 属名のStrelitzia は、ゴクラクチョウ属を表します。1773年に南アフリカからイギリスに持ち込まれ、あまりの美しさに、ときの皇后の実家(Strelitz)の名前をつけたようです。
 種小名の reginae は、形容詞で「女王の」という意味です。 var. は、変種という意味で、regina は「女王」という意味です。
 
 いくつかの花のうち状態のよいものを取りだしてみました。
 オレンジ色の外花被(がいかひ)は、上に2枚、下に1枚、合計3枚です。
 その中に青色をした内花被が見られます。
 羽のような形をした花被が向かい合うようについています。
 右側に見られる大きなほうの内花被は、2枚の内花被片が合生しています。
 この花被の中におしべやめしべがかくされているのです。
 左側の小さいほうの内花被片は1枚で、内花被片の合計は3枚です。
 外花被片と内花被片の合計は6枚で、単子葉植物の特徴である3数性を示しています。
 
 オレンジ色の外花被を取りのぞくと上の写真のようになります。真上から見たものです。
 
 下の写真は、上の写真の左側部分を拡大したものです。
 基部に子房があり、そこから3枚の内花被が出ています。
 めしべの花柱がこの中を通りぬけ、ヤリの穂先のような柱頭が花被の外に出ています。
 小さいほうの花被(写真中央)は、先がカギ形に曲がっています。
 
 ゴクラクチョウカのおしべは、大きいほうの花被の中央にはさまれるようにあります。
 細長い(やく)が、白くうすい膜状のものにつつまれています。
 
 何本かのおしべの中央をめしべがとおりぬけ、そこから、柱頭(ちゅうとう)になっています。
 柱頭には自分の花粉がつかないように工夫されています。
 
 下の花被は、細く長くのび、途中から戦闘機の三角翼のように広がっています。
 下の花被を切りさいてみると、細長いおしべの葯を見ることができます。
 中核単子葉植物は、完全に3数性になっていますから、おしべの数は、たいてい3の倍数である6本がふつうです。
 
 ところが、ゴクラクチョウカに限らず、ショウガ目の花は、5本のおしべをもっているものが多いのです。おそらく、1本が退化したのでしょう。
 ここで取り上げている Strelitzia reginae も、おしべは5本です。
 
 (やく)がたてにさけ、そこからまん丸い花粉があふれるように出てきます。
  
 花粉は完全な球形で糸のようなものでからみ合っています。
 このおかげで花粉は粘着性をもつことができ、複数の花粉がめしべの柱頭(ちゅうとう)につきやすくなります。
 多くの花粉のうち、強いものが勝ち残れるようにするためなのでしょう。
 
 もう少し拡大してみましょう。
 繊維(せんい)状のものがたがいにからみあっています。
 
ゴクラクチョウカのめしべは、子房(しぼう)からのびた花柱(かちゅう)花被(かひ)の中を通ってヤリのほ先のような柱頭(ちゅうとう)に達した細長いものです。
 
 柱頭の表面を顕微鏡で観察してみると、ねばねばした液状のものが確認されます。
 これで花粉をつかまえるのでしょう。
 
 子房は花のつけねにあってわかりにくいものです。
 単子葉植物の特色となっている中軸胎座(ちゅうじくたいざ)が観察されます。中には、まばらに胚珠(はいしゅ)が見られます。
 
 単子葉植物は、なぜか平行の葉脈(ようみゃく)で進化することを選びました。
 葉脈は、水や養分をはこぶ管です。動物でいえば血管にあたります。
 平行に通っている葉脈と葉脈の間の細胞に水や養分を送る必要があります。
 大きな葉では、葉脈どうしのすき間が大きく、高い効率を期待できません。
 そこで、ゴクラクチョウカの平行脈は、鳥の羽毛のように中央の太い主脈から端に向かい、葉脈の本数を増やすことに成功しました。
 上の葉の写真を見ると、鳥の羽毛にそっくりですね。
 
 顕微鏡で拡大してみると、平行の脈どうしの間には、さらにアミダ状の連絡脈があり、大きな葉にもじゅうぶんな水がいきわたるようになっています。
 幅の広い葉では、ユリのような平行脈では、葉のすみずみまで水が行きわたらないので連絡脈が必要なのです。
 ヤマノイモは、網の目状の連絡脈でなんとか平行脈の短所を克服しましたが、ゴクラクチョウカはアミダ状の進化で、みごと大型化に成功しました。
 この成功は、初期のツユクサ類であるヤシ目のDNAから受けつがれたものでしょう。
 
 オウギバショウ
 学名 Ravenala madagascariensis Sonn.  中核単子葉植物 ツユクサ類 ショウガ目 ゴクラクチョウカ科 オウギバショウ属

 オウムバナなどの熱帯植物には、このような平べったい花はよくあります。しかし、このように大きなものは、さすがに圧倒的です。
 オウギバショウは、旅人の木としても知られています。
 葉鞘にたまった雨水を飲めるということと、扇のような葉が特定の方角に向けてつくことから方位を知ることができるという2つの説があります。
 オウギバショウという名前がついていますが、バショウのなかまではありません。前記のゴクラクチョウカのなかまなのです。
 しかし、ゴクラクチョウカよりもさらに大きなものです。
 写真にあるオウギバショウは特に大きく、葉の長さは、2m以上あり、地面から葉の先までの高さが、測れませんでしたが、15m以上はあるでしょうか。東京夢の島熱帯植物館のドームいっぱいでしたから、かなりの高さです。
 こんなに大きくても、バショウ科の植物は樹木ではありません。草なのです。
 オウギバショウの名前は、葉鞘が(おうぎ)のように広がることからつけられました。
 扇やうちわのように平べったいのです。
 
 巨大な葉です。葉身だけで長さが2m以上もあります。
 葉脈が中央の軸に対して、ほぼ垂直についています。
 
 葉鞘(ようしょう)のつきかたは、アヤメのように跨状(こじょう)になっています。
 跨は、(はかま)という文字に似ていますがまたぐという文字です。
 下の葉が上の葉をまたぐようにつくことからこのように名づけられました。
 このところに雨水がたまるのでしょう。
 

 

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