キク科の特徴                 
 
 双子葉植物の中ではもっとも進化していると考えられ、多くの種を有する。
 12亜科に分類されるが主なものはつぎの4亜科です。
  ・ ムティシア亜科   ・ アザミ亜科
  ・ タンポポ亜科    ・ キク亜科 
 聞きなれないムティシア亜科にはガーベラがあります。
 食用にするキク科植物
 ・ 食用菊 ・ キクイモ ・ レタス ・ ゴボウ
 ・ シュンギク ・ カモミール ・ フキ ・ ヤーコン
 ・ スイゼンジナ ・ ヨモギ

 

キク科共通の派生形質  

・ 頭状(とうじょう)花序(かじょ)
・ 集やく(ゆう)ずい
・ (やく)に付属体がある
・ がく片は冠毛に変化
・ 下位そう果
・ おしべ先熟花

 

 頭状花序  
 植物に限らず最大の目的は子孫を残すことです。すなわちいかに効率よく種子を発芽させるかということなのです。
 発芽の確率を高めるためには、なるべく種子を多くつくらなければなりません。1個の花がたくさんの種子をつくると、1個あたりの種子の大きさは小さくなります。極端にいうと、粉のような種子になります。これでは胚乳(はいにゅう)子葉(しよう)に蓄える養分の量は非常に少なくなってしまいます。
 単子葉植物のイネ科は花の数を大幅に増やしました。イネ科ではたくさんの花を集合させたものを小穂(しょうすい)と呼んでいます。この小穂がさらにたくさん集まって穂をつくります。花の数は増えますが、1個の花には1個しか種子ができないので、胚乳に充分な養分を蓄えることができます。
 双子葉植物ではキク科が頭状花序を発明し、効率化をはかっています。
 キク科の花は、左の写真のように、小さい花が多数集まって1つの花をつくっています。
 大きな花をつくるもとになる小さな花を小花(しょうか)とよんでいます。コバナではありませんよ。
 だから、キク科の花は、花序(かじょ)なんです。花序というのは、花のつき方をいうことばです。
 キク科は頭状花序をもつ植物なのです。
 キク科の小花には1個の種子がつくられます。発芽するための養分は充分です。
 この1つのかたまりの花は、花序であって、ほんとうの意味での花ではないから、偽花(ぎか)(にせものの花)であり、こういうのを頭花(とうか)とよんでいます。

 花をたくさんつけるためには、小さい花の方が有利です。
 写真は、シラネセンキュウの散形花序です。
 シラネセンキュウはキク科の頭状花序とは異なりますが、たくさんの種子をつけることに成功しました。
 これも偽花です。
 このような偽花は、ほかにもドクダミ、アジサイ、ヒガンバナなどけっこうたくさんあるようです。
 左図は、散形花序(さんけいかじょ)といってセリ科の特徴です。

 

 筒状花と舌状花  
 頭花をつくっている小花には、筒状花(とうじょうか)、または、管状花(かんじょうか)舌状花(ぜつじょうか)の2種類があります。
 外側の白く長い花冠の小花は舌状花で、内側の小花が筒状花です。
 筒状花も舌状花も、アサガオなどと同じようにラッパ形ですから合弁花です。
 写真はヒメジョオンです。 
 シロヨメナの花冠(かかん)を上から見てみます。
 中央の黄色い花冠をもっているのは筒状花(とうじょうか)です。
 花冠の先が5つに()けているから5枚の花弁ということです。
 花冠の中央から棒状につきでているのはおしべめしべです。
 外側の白い花弁をもっているのは舌状花(ぜつじょうか)です。
 フキの雄花の筒状花(とうじょうか)です。
 花冠は筒状(つつじょう)になっており、筒状部2の中にはおしべの葯がが収まっています。
 雄花にもめしべがあるのですね。雄花のめしべは雌花のめしべより大きいです。
 雄花のめしべの役割はおしべ先熟化のところで解説します。
 ヨメナの頭花から舌状花(ぜつじょうか)を取りだしてみます。
 花冠の基部は筒状になっていますが、途中からVネックになっていて、そこから舌状部が大きくのびています。

 タンポポには舌状花しかありません。
 タンポポやコウゾリナをルーペで観察してみると、舌状花は、花冠の先がいくつかに裂けているのに気づきます。
 花弁の先端に相当するもので、5つにさけていれば、5枚の花弁が合生したものということになります。
 ただ、たいへん小さいので、花弁とはいわず、歯とよびます。
 ハキダメギクの舌状花の花冠は3つに裂けています。
 5枚のうち2枚が退化したと考えられます。
 同じハキダメギクでも筒状花の花冠は5つに裂けています。

 

 総包  
 緑色の部分は、他の花だったらがくといえますが、キク科の場合、小花(しょうか)をまとめるはたらきですから、がくとはいわず総包(そうほう)といいます。
 がくは1つの花を包むもの。総包は複数の花を包むもの。
 総包は総包葉を簡単にいったことばですが、ふつうは単に総包とよぶことが多いです。
 総包と小花の間に、うす茶色のりん片があるものもあります。
 キク科の総包には特徴があって(しゅ)を特定する手がかりになります。
 以下はいろいろな総包です。変化に富んでいます。
総包外片は大きく反り返らない 総包外片は大きく反り返る 針のような毛が生えている
まばらな毛 赤紫色の縁が特徴の総包片 極端に小さい総包外片
花に比べて大きい総包 黒い三角の模様が特徴 総包内片より外片のほうが大きい
白い花弁状の総包 葉のような総包 トゲ状の総包
総包がつぼ状に合着して雌花を包む ヒトデのような5本の総包

 

 集やく雄ずい 
 上の写真はフキの雄花から取りだした小花です。両性花のようです。おしべのつくりは、花冠の内側から花糸を出しその先に花粉をつくる葯を持っています。  5個の葯が輪のようにつながってめしべの花柱を取りまいています。
 キク科のおしべは5本ですが、
この葯に特徴があります。
 集葯ゆうずいといって、葯がたがいにつながって筒をつくっているのです。
 葯の内側が裂けて筒の中に花粉をはき出します。

 

 付属体 
 コセンダングサのおしべです。
 おしべの葯の先端には、先端がとがったヘラ状のものがついており、特に重要な物ではなさそうなので、付属体と呼んでいます。
 センダングサ属の付属体にはものすごい特徴があります。写真でわかるように、黒い葯の先に大きな矢じりのような付属体になっているのです。このような付属体は、コスモスにもあります。

 

 おしべ先熟花 
 キク科のおしべ・めしべはおおかたこのような感じです。
 筒状になったyくの中をめしべが通っていきます。
 写真は通ったあとの状態ですが、通る前は柱頭は開いていません
 つぎの写真のようになっています。
 葯は筒の内側が裂けて筒の中に花粉を放出します。
 タンポポのめしべ(柱頭・花柱)です。
 わかりやすいように柱頭を少し開いて撮影しました。はじめは1本の棒状になっています。
 まわりに毛が生えています。柱頭の内側に生えていません。
 毛の向きに注意してください。
 筒の中に放出された花粉を棒状のめしべが注射器のピストンのように押し出します。だから毛は進行方向に向かって生えているのです。
 フキの場合は花柱と柱頭の境目にリング状に毛が生えています。
 フキはこの毛の束で葯筒の中の花粉を押し出します。
 だから雄花には太いめしべがあるのです。
 このとき柱頭は閉じています。柱頭の外側では受粉できません。受粉できるのは柱頭の内側だけです。
 ちなみにフキの雌花にはおしべがありません。めしべは花粉を押し出す必要がないから、めしべは雄花のより細いです。

 葯の内側がさけて花粉が筒の中にたまります。その筒の中をめしべは花粉をおしてのびていきます。
 左の写真は、ツワブキのおしべですが、ちょうど花粉が押し出されてきたところです。
 このとき、めしべの柱頭はとじていて、自家受粉(自分の花粉を受け入れること)をさけます。
 左の写真は、コセンダングサです。
 めしべがおしべの外へ出てきて、柱頭が開いたころには、自分の花粉はほとんど残っていません。柱頭の内側しか受粉しないからです。
 要するに、キク科の植物は、おしべが先に成熟し、その後、めしべが成熟するということです。成熟時期をずらして自家受粉を防いでいることになります。
 こうして、キク科のめしべは、自分の花のおしべから花粉をもらわず、自分以外で同じなかまの花粉を受け入れるのです。
 花粉を運ぶのは昆虫たちの役目ですね。
 しかし、セイヨウタンポポのように自家受粉するものもあります。

 

 めしべ 
アメリカタカサブロウ ノゲシ ノコンギク
ヨメナ ツワブキ タンポポ
 キク科は2つの心皮(しんぴ)が合生して1つのめしべをつくっています。
 柱頭が2つに裂けているのはこのためです。
 閉じていた柱頭はY字形に開き、やがてタンポポのようにくるくるまるまるものもあります。
ヒヨドリバナ コウゾリナ

 

 下位そう果 
タンポポ ノゲシ アメリカタカサブロウ
ノボロギク ハキダメギク ヨメナ
 そう果というのは、果皮がうすく種子にはりついて種子と果実が一体化した果実のことです。
 キク科は下位子房だから下位そう果といいます
アメリカセンダングサ

 

 冠毛 
 冠毛はがくが変化したものです。
 綿毛ともいいますね。
 タンポポの冠毛はそう果からくちばしが長くのびて左の写真のようになります。
 それに対してノゲシにはくちばしがなく、そう果から直接冠毛が出てきます。
タンポポ タンポポ
 写真は花が終わったあとのアメリカタカサブロウです。
 タカサブロウの冠毛は非常に小さく退化してルーペでやっと見えるくらいです。
ノゲシ アメリカタカサブロウ
 センダングサのなかまは少し変わっています。
 くちばしがなく、冠毛はトゲに変化しています。
 ひっつき虫といわれ、子どもがよくつけあって遊びます。
コセンダングサ コセンダングサ
 コウゾリナの冠毛は羽毛のように枝分かれしているのが特徴です。
 タンポポの冠毛は枝分かれはしていません。トゲがあります。
 顕微鏡で観察します。
 人間に血管があるように、冠毛の1本1本にも、ちゃんと水の通る管があるんです。 
コウゾリナ タンポポ

 

 葉の形  
 観賞用の菊の葉は、どれも同じような形ですが、キク科は大きな科ですから、いろいろな葉形があります。
 タンポポ、ノゲシに見られる羽状(うじょう)分裂葉(ぶんれつよう)。ヤブレガサ、オナモミの掌状(しょうじょう)(手のひら状)分裂葉。フキのような円形の葉。 
 センダングサは奇数複葉です。細長い葉。糸のような葉。
 これらは、葉だけ見ても、何という植物か見当がつきますが、平凡なふつうの葉も多いですね。
 
オオオナモミ ノゲシ キツネアザミ
アキノノゲシ マメカミツレ コセンダングサ
ヤブレガサ ヨメナ ヤクシソウ

 

 葉のつき方 
 
 キク科は大きな科なので、葉の形やつき方にもいろいろな種類があり、キク科の特徴というわけにはまいりません。
 もう少し小さなグループである「属」の特徴になります。
  
対 生  同じところから葉が向かい合ってつくものです。
 センダングサのなかまがこれにあたります。
互 生  葉が互いちがいにつくものを互生といいます。
 葉のつき方の中では、最も多い
輪 生  1カ所から3枚以上の葉がつくものです。
 キク科にはありません。
ロゼット  タンポポのように放射状に広がったつき方です。本当は互生ですが、茎が極端に短くなりこんな形になるのです。
 タンポポやコオニタビラコがこれにあたります。
互 生
根 生
 冬の間は、ロゼットで過ごし、春になってから茎がのび、茎の葉は互生になるものです。。
 アキノノゲシやヒメムカシヨモギなどがこれにあたります。 
互 生
対 生
 根元に近い方が対生で、枝先のほうが互生です。
 キク科ではブタクサです。


 

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