ウンシュウミカン

 中核真双子葉植物 アオイ群 ムクロジ目 ミカン科 ミカン属 (APG分類体系)

 学名  Citrus unshiu Marcov
 静岡といえば、お茶とミカン。冷凍みかんなんていう歌もはやっています。
 みかんは果実がついているときは、遠くから見ても楽しめます。 
 紀州みかんに対して、静岡のは温州(うんしゅう)みかんです。
 
 5月には、つやのある若葉が出ます。
 写真で見ると、お茶の葉みたいな感じがします。
 葉のつきかたは、互いちがいにつくから、互生(ごせい)です。
 
 「まりと殿様」という歌にみかんが出てきます。
 まりが殿様に拾われ、紀州に着いてみかんになったという歌です。
 静岡(伊東)にも川田正子や井口小夜子が歌った「みかんの花咲く丘」という童謡があります。
 年配の人なら、知らない人はいないほどの歌です。でも、みかんの花がどんなものか知っている人は少ないでしょう。
 5弁の白い花です。
 
 花を裏返してみましょう。
 緑色のがくが確認されます。
 果実になったとき、へたと呼ばれる部分です。
 
 横から観察してみます。
 ずんぐりした大きな柱頭が目立ちます。
 たくさんのおしべが、めしべの花柱をとりかこんでいます。
 
 みかんの果実を思わせるような大きな柱頭に昆虫がたかっています。
 わずかに甘い汁が出ているようです。
 おしべの葯は、ほとんどがしぼんでいるようすです。
 多くの植物は、おしべとめしべの成長時期をずらして、自家受粉することを防いでいます。
 それでも、1本だけしぼんでいないおしべがあるみたいです。
 おしべの成長も少しずれたものがあって、受粉時期のタイミングをカバーしているのです。
 
 おしべだけむしり取ってみました。
 たくさんのおしべが横にならんでいます。
 よく見ると、花糸の5分の1くらいのあたりから、膜状のものでつながっているようです。
 
 葯には2個の葯室があり葯隔でつながっています。
 その葯隔に花糸がつながって1本のおしべになります。
 写真では、葯室が裂けてたくさんの花粉が見えています。
 
 1個の葯を拡大してみます。
 手前左に見えるのは、他の古くなった葯の先端です。
 後方中央に見えるのは、開きかけた葯です。
 上下に2個の葯がならんでいます。
 
 これは、開く前の葯です。
 花粉が透けて見えます。
 
 花粉をはき出し、からになった葯です。
 
 
 もう一度、花を横から見てみます。
 このおしべは、葯の状態から見ると、まだ若々しそうです。
 たくさんならんだおしべの中心には立派なめしべがあります。
 
 花被やおしべを取りのぞいて、めしべを観察しやすくします。
 左のオレンジ色の部分は柱頭です。
 緑色の球形のかたまりは子房です。その間をつなぐ棒が花柱です。
 
 柱頭を拡大してみます。
 表面が少しぬれています。
 柱頭の表面からあまい粘液を出して、花粉の発根を促そうとしているのです。
 柱頭に細かい突起をたくさんつけて花粉をつかまえようと進化した植物はおおくありますが、ミカンのなかまはつるつる頭です。
 柱頭を大きくして、粘液を出して花粉をつかまえようとしている。これでも困らないから現在に至っている、そんな進化もあるのです。
 
 柱頭の下は花柱。さらにその下に子房があります。
 果実になるずっと前の子房のときから、みかんの形をしていますね。
 静岡ミカンの特徴は、皮が薄いことです。だから、小さくても中身は大きい。ちょっと得をした気分です。
 日持ちがいいので、昔から正月用として重宝(ちょうほう)がられています。
 
 子房を輪切りにしてみます。
 中に見えるツブツブは胚珠です。しかし、種子まで成長するのはまれです。最近のみかんには、あまり種子はないのです。
 ミカンの果実は、12個前後の子房が合着して1つの子房になったものです。もとは1つの子房であったものが袋として残ったのです。この袋をじょうのうといいます。
 じょうのうの中には毛が生えていて、それが食べるところのツブツブになるのです。これを砂のうと呼んでいます。
 ミカンのツブツブは、子房の中の毛が進化したものなのです。おもしろい進化ですね。
 
 最後に、ミカンの中の変わりダネを紹介します。
 ブシュカンといって、妙な形をしています。
 
 右の写真のものは形が整っています。
 しかし、これがほぐれて手の指のようになるのです。
 ブシュカンは漢字で仏手柑と書くように、仏様の手のような形をしています。
 四国・九州でつくられているようです。
 砂のうは、ほとんどなく、果皮を砂糖漬けなどにするそうです。また、観賞用に育てる人も多いようです。
 

 

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