ユリ科の特徴                 

 

 かつてユリ科は大規模で単子葉植物の代表ともいえる存在でした。6枚の花弁をもち子房上位で百合っぽく見えるものは、すべてユリ科にしたのです。
 ところがAPG(1998年)が出現してから、大幅に整理されていきました。
 ユリ科の多くの属がアスパラガス科へ転科していきます。その結果ユリ科植物は極端に減少しました。
 現在日本でユリ科に属しているものは、おもに以下の属です。
 アマナ属    ウバユリ属     ツバメオモト属
 カタクリ属   バイモ属      タケシマラン属
 ユリ属     ホトトギス属    チューリップ属 

 

ユリ科共通の派生形質

ユリ科の主な派生形質(特徴)
・ 子房上位
・ 花被に斑点がある。
・ 蜜腺は花被またはおしべのつけ根にある。
・ 葯のつき方は丁字着葯
・ 葯は外側を向いている。 
 他に単子葉植物としての特徴につぎの形質があります。
・ 花被が6枚。(内側3枚、外側3枚)[3数性]
・ 雄しべが6本。[3数性]
・ 葉脈は平行脈
・ ひげ根 (不定根)

 

 子房の位置
 花冠の内側から見たオニユリの子房です。
 子房からは花柱(めしべ)が出ています。
 子房のまわりに6本の花糸が観察できます。
 内側から見えるということは、子房が花冠のつけ根より上にあるので、子房上位となります。
 アスパラガス科(ヒガンバナ科)は子房下位だから、ここがちがうところです。

 

 中軸胎座
 ホトトギスの子房を輪切りにします。
 
 子房の部屋は3つあります。これは中軸胎座といって単子葉植物の共通の特徴になります。(3数性)
 各部屋に2列ずつの胚珠はいしゅがならんでいます。胚珠は熟じゅくすと種子になります。
 がくも花弁もおしべもめしべも葉が進化してできたものです。めしべのもとになった葉のことをしんぴ(心被または心皮)といいます。だから、ユリ科のめしべは、3枚の葉からできたということになります。

 

 花被の斑点
 花被には斑点模様があります。
 オニユリやホトトギスのように派手なものもありますが、テッポウユリのように純白のように見えるものでも花被の筒の奥のほうにやはり斑点はありました。
 濃い色のものもよく見ると斑点を見ることができます。
ウバユリ オニユリ
ホトトギス テッポウユリ オリエンタル ハイブリッド
ヒメサユリ ホウライジユリ スカシユリ

 

 蜜腺
 蜜腺とは蜜を出すところをいいます。
 ユリ科の場合は花被または花糸のつけ根にあります。
 ホトトギスは少し変わっていて、外側の花被(3枚)のつけ根が袋状になっていてそこに蜜をためます。
 袋状のところを距といいます。

 

 丁字着葯 (おしべ)
 ユリ属の花糸は、細くなった先が葯の中央についているので、葯がゆらゆらとゆれます。
 丁字(ていじ)形につくから、このようについた葯を丁字着葯と呼んでいます。
 ユリの名前の由来は、花が大きく、風でゆれるからということのようですが、葯もゆれるのです。
オニユリのおしべ ホトトギスのおしべ

 

 
 タカサゴユリです。
 線形(幅がせまく細長い形)の葉です。
 ユリ科は単子葉植物だから、葉脈は平行脈です。
 
 オニユリです。
 苞葉はふつうの葉とは異なります。
 茎につくふつうの葉  花柄につく苞葉
 




 春先の葉 斑点模様が特徴  秋の花が咲くころの葉  秋 茎の先のほうの葉

 

 鱗茎(りんけい)
 植物は、海から陸へと進化してきました。
 最初に陸へ上がったコケ植物は、まだ、根がありませんでした。
 シダ植物になると、地下茎が発達し、そこからヒゲのような根がつき始めたのです。
 被子植物に進化しても、なお、地下茎をもっているものが少なくありません。
 オニユリも、地下茎をもっています。
 地面に近い地下茎には、浅い根が広がっています。上根といって、養分や水分の7割方を吸収するはたらきがあります。
 根のあいまには、むかごと同じような球芽がついています。こちらは、木子と呼ばれ、土の中だから白っぽい色をしています。地表近くでは、うっすらと緑がかってきます。
 その下には、りん茎と呼ばれるかたまりがあります。
 りん茎というのは、地下茎のまわりを肉厚の葉がラッキョウのようにとりまいたものです。
 りん茎のりんは、漢字で鱗と書き、うろこという意味です。表面が魚のうろこのように見えるから、このようにいうのでしょう。
 りん茎の下には、からだを支えるためのしっかりとした根がのびています。
 りん茎は、むかごを大きくしたようなもので、食用になります。スーパーなどで百合根として売られています。
 茶碗蒸しなどに入れたり、あまく煮付けたり、いろいろな調理法があるようです。
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