花のつくり


花は、子孫を残すために、シュート(葉と茎)が進化してできたものです。

 シュート     

 1本の茎に葉がついているまとまりをシュートといいます。植物は、シュートに根がついているものであるといえますね。
 花は、このシュートから進化したといわれています。
 花が咲く植物が地上に現れるまでは、シダ植物がさかえていました。ワラビやゼンマイでおなじみの植物です。
 シダ植物は、葉に胞子のうをつくり、ばらまかれた胞子が発芽して前葉体というからだをつくります。胞子のうをもつ葉を胞子葉といいます。
 前葉体では、精子と卵がつくられ、受精します。そのとき、精子が卵にたどり着くためには雨や露(つゆ)の水が必要だったのです。泳いでいくわけですからね。
 ある植物は、雨や露の水にたよらなくても受精できるように、前葉体を葉にのせたまま花に進化していきました。

 花葉(かよう)    

 シュートについている葉が、それぞれ、めしべ、おしべ、花弁、がく片、包葉などに進化していきました。
 これらの葉を花葉といいます。
 がくの中には、まるで葉のようなものがあります。花びらも葉脈のような細いすじが見えます。
 これらのことは、花が葉から進化してきたことを物語ります。

 花茎(かけい)    

 地下茎から出て花だけをつける茎のことを花茎といいます。当然枝分かれはしません。複数の花を持つ場合複数の花柄が枝分かれのように見えるかもしれません。それでもふつうの葉(苞葉ではない)をつけなければ花茎になります。
 地下茎といっても横に長くのびる茎とはかぎりません。タンポポを想像するとよいでしょう。
 ほかにもツルボ、オオアマナ、タマスダレなどがあります。
  

 花のつくり 

 花になるシュートは、一番上の葉を1枚〜数枚めしべに変え、つぎの葉を何枚かおしべに変えていきました。さらに、がくや花冠をつくっていきました。
 現在、一般的な花は、左図のようなつくりになっています。もちろん、このとおりにならないものもたくさんあります。
 進化というのは、何億年もの長い年月を経て、進んだりもどったりゆっくりと変化してきたのですから、たいそう複雑なんです。
 花の()花柄(かへい)といい、その先端(せんたん)花托(かたく)があります。この花托の上に、外側から、がく(がく片)、花冠(花弁)、雄しべ、雌しべの順についています。それぞれは、みな葉から進化したものです。
 花柄には包葉(ほうよう)という小さい葉がついています。
 これらの花葉が全部そろっているとは限りません。どれかが欠けている花など、めずらしくありません。タデ科のなかまのように、花弁がなくて、がくが花弁のように美しくなっているものもあります。

 花柄(かへい)

 シュートの茎が花柄(かへい)になりました。
 これは、ほかの葉をつける茎とは区別されます。
 子孫を残すための生殖器官である花をつけるための専用の茎なのですから。 

 花托(かたく)

 花托は、それらの花葉を支えるところで、あまり目立ちません。
 変わったところでは、イチゴがおもしろいですよ。イチゴは、花が咲き終わると花托がふくらみ、赤く色づきます。あの食べるところが花托なのです。ゴマみたいなものは、なんと、果実なのです。種子はこの粒々(つぶつぶ)の中に入っています。
 

 花床(かしょう)

 頭花の小花をつけるところを花床といいます。
 花托は、1つの花をつけるところであり、花床は、いくつもの小花をつけるところですが、このごろは、どちらも花床という傾向があります。

 花盤(かばん)

   花托の一部が大きくなってつきだしたものを花盤といいます。
 写真は、ヤブガラシの花ですが、赤くなっているところが花盤です。
 花盤が肥大して子房のまわりをおおっています。
 子房の上に盛り上がるものもあります。

 頭花:偽花(とうか:ぎか)

   頭花というのは頭状花序のことで、キク科やホシクサ科などに見られます。
 キク科の花を思い起こしてください。
 花を2つにさいてみますと、右上の写真(ヨメナ)のように、小さい花がたくさんならんでいることがわかります。
 その一つをとってみますと、右下の写真のようになります。小花(しょうか)といって、これがほんとうの意味での花なのです。
 キク科の花は、小花を多数つけて1つの花としてまとまっています。
 だから、ほんとうは、小花が集まっている花序なんです。花としてはニセモノです。
 そういう花を偽(ニセ)の花、すなわち、偽花(ぎか)とよんでいるんですよ。
     

 包葉(ほうよう) 総包(そうほう)

 きずつきやすいおしべやめしべをつぼみの状態で守るのは包葉の役目でした。一番下の葉が変化したものです。
 しかし、がくがそのはたらきをするようになってからは、包葉の出番はなくなってきます。
 だから、包葉がなくなってしまった植物もたくさんあるんですよ。  
 タンポポのように小さい花がたくさん集まって1つのかたまりになっている場合、それを包み込む包葉は1枚では足りませんね。
 何枚もの包葉ががくのように花を包みこみます。この包葉を総包(そうほう)といいます。
 ドクダミの白い花弁に見えるのも、じつはこの総包だったのです。

 ツユクサの花をつつみこむように
している包葉もあります。
 ドクダミの白い花弁に見える
ものは、総包なのです。
 タンポポのがくに見えるもの、じつは、総包なのです。

 

 雄しべ     

 雄しべは、葯と花糸の2つから成り立っています。葯の中には花粉が入っていて、これがさけたり穴があいたりすると中から花粉が出てきます。
 雌しべは、ふつう1本ですが、雄しべは2本以上になります。雄しべの数や集まり方は、科の特徴になります。

   

 雄しべの種類     

 二強雄ずい  雄しべ4本のうち、2本が長く2本が短いもの。
 四強雄ずい  雄しべ6本のうち、4本が長く2本が短いもの。
 単体雄ずい

 花糸の下部がつながって筒状になっているもの。

 二体雄ずい

 雄しべ10本のうち、9本の花糸が合生し、1本だけが独立しているもの。

 集葯雄ずい  葯が合生して筒状になったもの。

   

 葯     

 (やく)は、2個の葯室からなりたっています。
 2個の葯室の間を葯隔(やくかく)といいます。
 ふつうは、2個の葯室が、葯隔を間にせなか合わせに(平行に)ついています。
 
オシロイバナの葯
平行についている最も
ふつうの葯です。
ツルニチニチソウの葯
 黄色いところが葯です。
キツネノマゴの葯
葯室がたてに
つづいています。
ガガイモの花粉(かい)
ガガイモ科やラン科
に見られます。

 葯のつき方     

  葯が花糸にどのようについているか? これにはいくつかのタイプがあります。

側 着 葯(そくちゃくやく)  花糸が葯隔につながり、その両側に葯室がついたものです。
丁字着葯(ていじちゃくやく)  葯隔の中央に花糸がつき、(てい)の字形になったものです。
底 着 葯(ていちゃくやく)  葯の底(下の部分)に花糸がついたものです。

  これ以外にもいろいろな形があります。

 側着葯
 タガラシ
 側着葯
 ショカツサイ
 丁字着葯
 オニユリ
 丁字着葯
 アカバナユウゲショウ
 底着葯
 ユキノシタ
 底着葯
 カゼクサ

 葯のさけ方     

 「葯室」の項のオシロイバナのように、たいていの葯は、たてにさけて花粉を出します。このようなさけ方を「縦列葯(じゅうれつやく)」といいます。
 このほかにも、ナス科の花のようにテッポウのように花粉を出す「孔開葯(こうかいやく)」というものがあります。
イヌホオズキ
孔開葯

 花糸(かし)    

 花糸は、葯につながっています。
 反対側は、どこにつながっているのでしょう。
 おもしろいことに、必ずここにつながっているというわけではありません。
 花弁のつけねについているものもあれば、花托から出ているものなどもあります。
 花弁についているものは、花弁をとると、いっしょについてきますからわかります。

  こんなのは、どう花糸ら

ヤセウツボ
くねくね曲がっています
オカトラノオ
腺毛(せんもう)が生えています
ムラサキケマン
下部が平べったいね
 

 心皮(しんぴ)   

 めしべは、シュートの一番上の花葉が変化したものです。
 めしべをつくる花葉をとくに心皮(しんぴ)といいます。
 めしべは、柱頭(ちゅうとう)花柱(かちゅう)子房(しぼう)の3部から成り立っています。
 柱頭で花粉を受けて、花粉の中の精細胞が子房の中の胚珠にある卵細胞ととけあって、新しい生命を誕生させます。
 このことを受精といいます。
 花柱は、精細胞の通り道です。
 新しい生命をもらった受精卵は、(はい)とよばれ、からだのもとになります。
 胚をつつんだ胚珠(はいしゅ)は、やがて種子になっていきます。
 胚珠をつつんだ子房は、やがて果実とよばれるようになります。

 子房の中 

 新しい生命は、子房の中でつくられます。
 子房の中には、胚珠を育てる部屋があります。
 サヤエンドウを思いうかべてください。(右図)
 エンドウのさやは、じつは子房なんです。
 さやを開いてみますと、葉のようになるでしょう?
 花葉のへりに胚珠がついています。
 エンドウは、このように1枚の葉が折りたたんで子房をつくっているのです。
  

 胚珠のつき方(胎座(たいざ)) 

  子房の中で胚珠がつくところを胎座(たいざ)といいます。
  お母さんのおなかの中で、赤ちゃんがつくところを胎盤(たいばん)といいますから、納得ですね。

 側膜胎座(そくまくたいざ) 

    心皮が輪のようになり、心皮のへりがつながったところに胎座をつくるものを側膜胎座といいます。
 側膜胎座で心皮が3枚の場合、3枚がつながって1つの輪をつくりますから、部屋の数は1室で、胎座の数は3個になります。
 つまり、側膜胎座の場合は、胎座の数は、心皮の数と同じになり、部屋数は、必ず1室になります。
 エンドウのように1枚の花葉(1心皮)で1室つくるものを、とくに縁辺胎座といいます。 
 
ナズナ
アブラナ科



 ナズナなどアブラナ科は、2枚の心皮が右の図のように折れてつながったのです。
 つながったところはかたいすじのようになりますが、葉の中央の葉脈ではなく、
あくまでも葉のへりになります。
 ナズナの場合は、葉のへりが果実の中央になったのです。
 
ムラサキケマン
キケマン科
 キケマン科の子房は、2心皮で1室をつくっているから、基本的にはアブラナ科と同じです。
 果実の形もアブラナに似ています。
   

 中軸胎座(ちゅうじくたいざ)  

    中軸胎座は、心皮が三つ折りになります。
 三つ折りになった心皮の両はじが中央に集まって軸のようになり、そこが胎座になります。
 心皮は2枚以上になり、胎座の数は、心皮の数と同じになります。
 
カタバミ
カタバミ科
 上のシロツメクサなどマメ科の果実とにていますが、中央に軸の胎座があり、胚珠はそこにつながっていることがわかります。
 
オオアマナ
ユリ科
 ユリ科のオオアマナの果実を輪切りにしたものです。
 3室になっているのがわかると思います。
 3枚の心皮のへりが、中央に集まって胎座をつくっています。

 特立中央胎座(とくりつちゅうおうたいざ) 

    特立中央胎座は、側膜胎座のように心皮の数に関係なく部屋数は1室ですが、
子房の底部が盛り上がって、球状あるいは柱状の胎座をつくります。
 1室ですから、側膜胎座と同じように、部屋のさかいの壁はありませんね。
 ナデシコ科とサクラソウ科だけに見られる胎座です。
 
ノミノツヅリ
ナデシコ科
 ナデシコ科のノミノツヅリは、子房の底に胎座ができ、そこから糸状のものがのびて胚珠につながっています。
 まるでキノコのシメジのようです。
 
カワラナデシコ
ナデシコ科
 同じナデシコ科でも、ナデシコ属のカワラナデシコなどは、子房の底から胎座がもりあがって、まるで軸のようになります。
 しかし、1室なので子房の中にしきりはありません。

    

 子房の位置 

 子房が花のどの位置にあるかは、植物の特徴になります。
 初期のころ、子房は、ただ花托の上にのっていただけでした。それが子房上位です。その後、子房を保護するため、しだいに花托が筒状になり、子房を包みこむようになりました。それが、子房下位です。花托が筒状にへこむ代わりに、がく片が互いにくっついて筒状になる場合もあります。
 子房を保護するってどういうこと?
 子房には、胚を育てるための栄養がたくわえられています。だから、虫にねらわれやすいのです。
 下の図でいうと、上から下へと進化していきました。

子房上位  子房は、がく、花弁、雄しべと同じ高さにあります。
子房周位  筒状の花托の底に子房があるときをいいます。
子房中位

 花托筒が皮のようになって、子房の半分にへばりついています。

子房下位  子房は、完全に花托筒におおわれます。

  

 花柱(かちゅう)    

    子房は種子をつくるところですが、その前に花粉を受けなければなりません。
 花粉を受けるために子房からつきだしているのが花柱です。
 花柱の数は、植物によってまちまちです。
 左の写真はソバのめしべです。ラッキョウのような形をした子房から3本の花柱が出ています。
 子房から棒を出しただけでは、花粉を取り入れることはできません。
 花柱の先が花粉をとらえるのに適したしくみをもつようになったのが柱頭です。

  

 柱頭(ちゅうとう)

 まず第一に、柱頭は、花粉をつかまえなければなりません。
 そのためには、表面をザラザラにしたり、ベタベタにする必要があります。
 また、花粉と接する面積を大きくするために、突起物(とっきぶつ)をつくるなどの工夫も必要でした。

 第二に、つかまえた花粉から精細胞(オスの核)を取り出さなくてはなりません。
 花がすぐれているのは、実にこの点なのです。
 柱頭の突起物から糖をふくんだ粘液を出します。この糖液は花粉の溝(みぞ)などへこんでいる部分にしみこんでいきます。糖のはたらきは、花粉へのおさそいです。

 気をよくした花粉は、精細胞を胚珠の卵細胞まではこぶために、特別な通り道をつくります。
 それが、花粉管というトンネルなのです。
 花粉管は花粉細胞の体液で満たされていますから、精細胞は、雨や露の水がなくても楽に卵細胞までたどり着くことができます。たいした発明ではないですか!
 精細胞が卵細胞にゴールして、めでたく受精がおこなわれ、新しい生命が誕生するのです。

 花柱の数は心皮の数と同じですから、その数の心皮が合成して雌しべになったことを示しています。
 また、1本の花柱でも、先がさけていたり、柱頭が割れていたりすれば、それも、その数の心皮が合成されたことを示しています。しかし、必ずそうだというわけでもありません。例外もあるんです。
    
    ソバ (タデ科)
 3本の花柱のうちの1本です。
 最も単純な柱頭で表面積が小さい。
 それでも花粉を1つとらえています。
 それは、表面が粘液(ねんえき)でねばねばしているからです。
 
    イヌガラシ (アブラナ科)
 2枚の心皮が合成してめしべをつくっています。
 柱頭の表面をよく観察すると、かすかに2つに割れているのがわかると思いますよ。
 表面に突起物(とっきぶつ)ができました。
 これで、柱頭の表面積を大きくして、花粉と接しやすくしているんだ。
 
    ミズタマソウ (アカバナ科)
 ふつうアカバナ科の柱頭は、4つにさけています。
 ミズタマソウ属の柱頭は、2つに割れています。
 おしべも花弁もがくも2個であるから、ミズタマソウは2の花であるといえるでしょう。
 カワラナデシコと同じように、こまかい突起物におおわれています。
 
    カワラナデシコ (ナデシコ科)
 2本の花柱のうちの1本です。
 柱頭の片側にこまかい突起物がたくさんついています。
  これで表面積を大きくして、花粉をとらえやすくしています。
 
    ヒルガオ (ヒルガオ科)
 柱頭が完全に2つにわかれています。
 その1つ1つが小さなブロックになっていて、さらに、各ブロックは、ミズタマソウのようにこまかい突起物でできています。
 かなり進化しているといえます。
 
    スズメノカタビラ (イネ科)
 単子葉類の植物の中では究極(きゅうきょく)に進化したものです。
 花柱が2本あり、それぞれにひげのような柱頭がついています。
 1本1本のひげには、トゲのような短い枝がついています。
 こうやって表面積を大きくし、風にはこばれてきた花粉をとらえるのです。
 
    ノゲシ (キク科)
 双子葉類の中では、キク科が究極の進化をなしとげました。
 1本の花柱が深く2つにさけ柱頭になり、じゅくしてくると大きく左右に開きます。
 しかも、開く前、外側は受粉できないようになって自家受粉を防いでいるのです。
 内側は、こまかいトゲのような毛でおおわれ、表面積を大きくしています。

  変わった柱頭

    ツルニチニチソウ (キョウチクトウ科)
 ほそ長いつつ型の花冠の底に蜜腺(みつせん)があります。
 昆虫は、蜜を求めてせまいつつの中にもぐろうとします。
 そのとちゅうに写真のような円盤形の柱頭があるのです。
 しかも、とてもべたべたしています。すごいしくみですね。
 
    ゼニアオイ (アオイ科)
 ゼニアオイは、南国の花で有名なハイビスカスのなかまです。
 おしべもめしべも変わっていますね。
 キク科のおしべはやくが筒型になっていますが、アオイ科の方は、おしべの花糸が合成して筒型になっています。
 その筒の中をめしべが通っていくのは、キク科もアオイ科も同じです。
 キク科の柱頭が2つにさけて2個の柱頭になっているのに対して、アオイ科の花柱は多数にさけています。

   そのほか、柱頭には、アヤメなど変わったものが少なくありません。 

 花被(がくと花冠)

単花被花

 花被が一重のもので、がくに相当します。まだ、花冠にまでは進化していなかった種なのです。
 花弁ではないので、花被がつながっていても、合弁花ではなく離弁花になります。
 
ヤブガラシのように、がくが退化し、花冠だけの単花被花もあります。

両花被花

 花被が二重以上のもので、外側のものを「がく」、内側のものを「花冠」といいます。(異花被花)
 外側と内側の花被のちがいがほとんどない場合、それらを、外花被、内花被といいます。(同花被花)

無花被花  ドクダミのように、花被のない花のことです。
 包や総包が花被の代わりをしていることがあります。

 合弁花・離弁花

合弁花

 アサガオのように花弁がつながった花をいいます。離弁花から進化しました。
 進化は、前進したり後退しながら、ゆっくりと進んできましたから、同じ科の中にも合弁と離弁の両方をもっているものもあります。

離弁花

 サクラのように花弁が1枚1枚はなれている花をいいます。
 また、タデ科のように花冠がなく、がくが花弁の代わりをして、しかも、つながっているものも離弁花ですから、合弁花・離弁花にあまりこだわらなくても良いと思います。

 

 花弁全体を花冠といいます。1枚1枚は、花弁といいます。

 花の冠(かんむり)という意味ですから、花びら全体のことをいいます。植物の種類によって決まった形をしているので、検索のときの目安になります。
 ちなみに、花冠とがくのちがいがないものやはっきりしないものを花被といいます。
 同様に花弁とがく片の場合には花被片といいます。

 花冠     

 花冠には、大きく分けて左のような2種類があります。
 放射相称というのは、花弁が同じ形で放射状に広がっているものです。
 すなわち、どの花弁でも花弁の中央に線を引いたとき、線の両側が鏡にうつったように対称(線対称)になるものです。
 左右相称というのは、上の花弁の中央に線を引いたときだけ、線対称になるものです。
 右の図の場合、上の花弁の中央に線を引いた場合は線対称になりますが、横に線を引いた場合には線対称になりません。だから放射相称にはなりません。

   放射相称

左右相称
 

 放射相称の花冠 

  
ろうと形 高盆形 車 形 釣り鐘形 筒状花 つぼ形

 キク科のように頭状花序(頭花)では、中央が筒状花でまわりが舌状花になることもあります。

 

 左右相称の花冠 

   舌状花は
筒状花(とうじょうか)が変化したもの
(くちびる)形・二唇形(にしんけい) (ちょう) 舌状花(ぜつじょうか)

 がく

  外花被全体をがくといいます。1枚1枚をがく片といいます。
  がくは、花がつぼみのとき、内部を包んで保護します。
  花が咲くと落ちてしまうもの(早落性のがく)と、残るもの(宿存性のがく)があります。
  花冠と同じように、がくにも「合片がく」と「離片がく」とがあります。
  がくが、まるで花弁とまちがえるほど美しいものもあります。チューリップやスイセン、ユリなどです。この場
  合、がくと花弁を区別しにくいので、ふつうはどちらも花被といいます。
  

 花序とは?

 花の並び方や集まり状態をいいます。植物を検索(けんさく;どこに出ているか、何であるか、調べてさがすこと)するときの目安になります。2種類の花序が組み合わさっているときもあります。黄色い○は花葉(1つの花)を表します。

単生花序 穂状花序 総状花序 散房花序 散形花序 複散形花序
集散花序 2出集散花序 3出状複集散花序 円すい花序 円すい形花序
さそり状花序 陰頭花序 頭状花序 肉穂花序

   

 花が美しいわけ

 植物でも動物でも生き物は、みな子孫を残そうとします。これは本能ですね。
 植物の場合、子孫を残すために種子をつくります。これ以外にも、キノコやワラビのように胞子でふえるもの、スイセンのように球根が分かれてふえるもの、さし木のように枝から根が出てふえるもの、ほかにもいろいろありますが、基本は種子です。種子は、受粉といって、めしべにおしべの花粉がつくことでできます。
 受粉のとき、花粉のはこばれ方に二通りあります。
  @昆虫にはこばれる。(虫媒花(ちゅうばいか)
  A風にはこばれる。 (風媒花(ふうばいか)   

 @の「昆虫に運ばれる」ためには、昆虫にわかるように目立たなければなりません。昆虫が見つける目印になるように美しい花になる必要があるのです。また、昆虫に来てもらうためには、おいしいみつを用意したり、昆虫にとってみりょく的なにおいを出したり、あの手この手で昆虫を呼びこもうとします。

 Aの「風にはこばれる」方は、@の条件は必要ありません。花粉症で有名なスギの花なんて、ぜんぜん目立ちません。
 イネ科など花があることさえ気づかない人が多いですね。








 
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