第48回  ツユクサ科 ヤブミョウガ属

姿はミョウガでも、ツユクサ科の特徴をもつ

 学名 Pollia japonica Thunb.  中核単子葉植物 ツユクサ類 ツユクサ目 ツユクサ科 ヤブミョウガ属
 ツユクサ科の中には、ちょっと変わったなかまがいます。なかなかツユクサとは結びつかないかもしれませんが、いろいろな特徴を調べていくと、きっと納得できるでしょう。

 ヤブミョウガは、食べると物忘れをすることで有名なミョウガとは、まったく異なる種類です。
 ミョウガは、ショウガ科であり、ヤブミョウガはツユクサ科ですから。
 葉や茎のようすがミョウガに似ていて、(やぶ)に生えるからヤブミョウガというらしいのですが、私にはとても似ているとは思えません。
 ちなみに、薮というのは、雑草や低木が密生しているところをいいます。     

 
 ミョウガは、ショウガ科のショウガ属ですから、葉や茎のようすはショウガにそっくりです。
 左の写真はショウガの葉と茎です。
 雰囲気は似ていないこともありませんが、ヤブミョウガの葉とはまったく異なりますね。
 

 (やぶ)の中にひっそりと葉を広げています。
 葉の長さは、20〜30cmもあり、かなり大きいです。形は、先がとがっている長だ円形です。高さは、幼稚園の子どもくらいあります。
 葉は、放射状に広がっていますが、よく見ると、葉がたがいちがいについているから輪生ではなく互生になります。
 ショウガ科も互生ですから、この点は同じです。しかし、葉のつきかたは、たいていの植物は互生であり、対生の植物は少なく、輪生についてはもっと少ないので、似ていることにはなりません。
 見た感じが、ツユクサよりはミョウガに似ているということなのでしょう。
 
 葉脈は、上の写真でははっきりしませんが、左の写真でははっきり見ることができます。
 中央脈が太く、ほかの脈はそれに平行になっていますから、平行脈です。単子葉植物の特徴になります。
 ミョウガの葉も平行脈ですが、ツユクサ科の平行脈とはかなり異なります。
 ミョウガなどショウガ科の葉脈は、鳥の羽毛のようなもようをしています。
 
 葉の基部は茎を()いています。
 (ふし)の下部は太くなっています。
 これは、ツユクサ科の特徴でもあります。
 こんな大きくがっしりしているヤブミョウガが、かれんなツユクサと同じ科なんて信じられませんね。
 
 花は夏の終わりごろ咲き、実は秋の中頃になります。
 静岡市では、夏休みが終わりに近づくころ、茎の先から花柄(かへい)をまっすぐのばします。
 輪生の花序がいくつかの層になって花柄につきます。円すい花序(かじょ)の一つといえましょう。
 各層の下には、数枚の苞葉(ほうよう)があります。
 花の形は、やはりツユクサに似ています。
 
 花茎(かけい)がザラザラしているので、拡大してみました。
 細かい毛がたくさん生えています。
 実体顕微鏡で観察すればよかったのですが、ついうっかりしました。
 毛の先がかぎ形になっているようです。
 したから上がってくる昆虫やナメクジなどの害虫を防ぐためでしょうか。
 
 ツユクサと同じように、花弁とがくの区別ははっきりしません。
 がくにあたる外花被が3枚、花弁にあたる内花被が3枚、合計6枚です。
 よく観察すると。外花被の方が質が厚く、形もまるい感じがします。
 ヤブミョウガの花には、両性花(りょうせいか)雄花(おばな)の2種類があります。
 左の写真は、どちらだかわかりますか?
 めしべの花柱がひょろ〜んと長くのびていますね。だから、両性花です。
 下の写真はどうでしょうか?
 
 おしべの花糸が長くこみあっています。
 花柱は、ごくみじかく見えません。これが雄花なのです。
 雄花といっても、未熟なめしべがあり、おしべだけではないのがおもしろいですね。
 
 内花被はすぐにしぼんでしまい、あとに残った外花被が子房を包みます。
 子房が、だんだんふくらんで、果実になっていきます。
 子房の上にのびているのは、花柱です。まだ落ちないのですね。
 
 果実の色が緑色になってきました。
 まわりの白いのは、外花被です。しぶとく残っています。
 外花被が小さく見えるということは、果実が大きくなったといえますが、外花被自身もちぢんでいます。
 花柱はかれてしまいました。
 
 果実が、あざやかな青に色づきました。
 果実の直径は、約 6mm くらいです。
 うす暗いやぶの中に青色が美しい。
 やがて、果実は、黒っぽく変色していきます。

 


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