第4回 水辺に広がるミュータントたち

 オモダカ

 学名 Sagittaria trifolia L.   初期の単子葉植物 ヘラオモダカ目 ヘラオモダカ科 オモダカ属
  学名は、属名のサギッタリアが「矢」という意味で、種小名のトリフォリアは「三葉の」という意味です。
 したがって、「三葉の矢」ということになります。
 たしかに、葉の形を見ると納得できます。
 初期の単子葉植物は、ヘラオモダカ目においてしだいに3数性を示してきますが、これは、葉のことではなく、花の各部分のことを指しています。

 

 
 オモダカは、雌雄異花(しゆういか)といって、同一の株に雄花(おばな)雌花(めばな)がつきます。
 雌花を見ると、花弁が3枚、がく片が3枚あり、これについては、3数性がはっきりしています。雄花についても同じことがいえます。
 しかし、おしべとめしべの数については多数で、3数性を示しません。この点、あとから出現する中核単子葉植物とは異なります。
 中核単子葉植物は、おしべやめしべについても3数性を示すのです。
 ヘラオモダカ目サトイモ科のミズバショウやザゼンソウは、雄しべや花被の数が4でした。これらのことから、初期の単子葉植物では、3という数がじゅうぶんに確立していないように思われます。
 やはり、まだ、基部被子植物の面影を残しているようですね。
 
  雄花は、中心に退化した雌しべがあり、そのまわりに多数の雄しべがとりかこんでいます。
 葯に花糸がつき、モクレン類のドクダミのおしべによく似ています。
  雌花には、多数の緑色の雌しべが集まっています。
 これは、柱頭(ちゅうとう)の突起ではなく、1つ1つがめしべなのです。
 このへんにも、シュートの名残を示す基部被子植物の特徴がうかがわれます。
 
 オモダカのおしべの(やく)です。ほんの少し開きかけています。
 中から花粉がこぼれるように出てきます。
 葯のはじに花糸(かし)がつくから、このような葯を底着葯とよんでいます。
 基部被子植物の初期のものは、花糸のないものが多く、花糸ができたということは、進化してきているということです。
 
 葯が全開になりました。
 2つの葯室が認められます。
 
 花粉を拡大したものです。
 解像度がよくありませんが、花粉の表面がコンペイトウのように小さな突起があることを確認することができます。
 単子葉植物が双子葉植物と異なる点に、花粉の(みぞ)(あな)の数のちがいがあります。
 単子葉植物は、溝が1つのものが圧倒的に多いようです。これを単溝粒(たんこうりゅう)の花粉といいます。
 
 初期の単子葉植物であるオモダカのめしべは、1本ではありません。
 緑色の1片1片がめしべなのです。
 それぞれのめしべの子房が、やがて果実になり、1つの果実に1個の種子をつくります。
 
 多数の扁平な果実がたくさん集まってまるい形をつくります。
 したがって、球形のものは、果実の集合体になるわけです。(ブドウの一房(ひとふさ)に相当します)
 さらに進化した中核単子葉植物の子房(果実)は、数個の心皮が合生して1個の子房をつくりますが、オモダカの果実は、これを暗示しているような気がします。


ヒルムシロ 
 
 学名 Potamogeton distinctus A. Bennett   初期の単子葉植物 ヘラオモダカ目 ヒルムシロ科 ヒルムシロ属
 1億4200万年前ごろには、ショウブ目からヘラオモダカ目が分かれました。
 ヘラオモダカ目には、オモダカ科のほか、サトイモ科やトチカガミ科、ヒルムシロ科などがあります。
 

 




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