第18回  葉状枝へ進化したアスパラガス

 最初のアスパラガス目が出現してから
3,100万年後の、今からおよそ9,200万年前にアスパラガス科が誕生したようです。
 花の特徴は、前回のヒヤシンス科によく似ています。
 異なるところは、果実が液果になることです。
 また、葉がりん片状に退化し、代わりに小枝が葉のように変化し、独特な進化をしています。
 

アスパラガス

 学名 Asparagus officinalis L.   中核単子葉植物 アスパラガス目 アスパラガス科 アスパラガス属
  アスパラガスは野菜として有名です。
 20cmほどの芽をつみ取ったものがグリーンアスパラで、土をかぶせて日光をさえぎり白くしたものをホワイトアスパラと呼んでいます。
  食用のもの以外にも、観葉植物として庭に植えるケースも見られます。
 左の写真のものも、その種類かもしれません。
 日本の野生種には、クサスギカズラやキジカクシなどがあり、アスパラガスと同じ属になっています。
 
 アスパラガスには大きな秘密があります。
 葉に見えるところが、じつは小枝なのです。
 これを葉状枝(ようじょうし)と呼んでいます。
 だから、さわってみると(かた)いですよ。
 みどりいろをしているから、葉緑体をもち、光合成をします。
 しっかり葉の代わりをしています。

 それでは、ほんとうの葉はどこにあるのでしょうか。
 
 白っぽく写っていますが、これがほんとうの葉です。
 りん片状です。
 なぜこうなったのかはわかりませんが、自然は気まぐれですから、ときどきおもしろい進化を見せます。
 進化には、必然性のあるものと気まぐれなものと二通りあるようです。 
 
 あまりきれいとはいえない花被が6枚あります。
 6は3の倍数ですから、花被が6枚あったら単子葉植物である可能性が高いといえます。 
 中央にはめしべが見えます。
 子房が見えるから、子房上位です。
 アスパラガス目には、子房上位のもの、中位のもの、下位のものなどいろいろありますから、子房の位置は、進化の大きな流れとは無関係なようです。
 おしべは6本あります。
 
 6枚の花被1枚1枚におしべがついています。
 花被の基部に根を下ろしたように、おしべの花糸がついています。
 おしべは、黄色い葯(花粉をつくるところ)と白い花糸(かし)の2つの部分でできています。
 
 おしべの葯(やく)です。
 写真では、上下2列にやく室がならんでいます。
 それぞれの葯室は、たてにさけ花粉を放出します。
 このように裂ける葯を縦裂(じゅうれつ)やくと呼んでいます。
 網目(あみめ)もように見えるのは、1つ1つが細胞だからです。
 葯室の内側の細胞が花粉に成長します。 
 
 葯を裏から観察してみます。
 花糸(かし)が葯にどのようについているかが、はっきり確認できます。
 花糸は、葯の中央についています。
 丁字着葯に見えそうですが、そうではありません。
 2つの葯室が、花糸がついている(写真で)上の部分は合着していますが、下の部分ははなれています。
 したがって、花糸の先端が葯隔(やくかく)に変化して、その両端に葯室がついていることになりますから、これは側着葯(そくちゃくやく)になります。
 葯室の下部が耳たぶみたいにのびているので、まぎらわしいのです。
 
 アスパラガスのめしべです。
 左のふくらんだ部分が子房です。
 子房は3室あり、花柱(かちゅう)も3本あります。
 
 花柱の本数は3本のはずですが、顕微鏡の観察では小さすぎて、しかも密接していたので、はっきりとはわかりませんが、柱頭(ちゅうとう)を見ると3つを確認できるので、花柱も3本でまちがいはないと思います。
 
 柱頭を拡大してみました。
 球状の突起が多数出ています。
 表面積を大きくしより花粉をつかまえやすくしているのです。
 ユリのデコボコ状より進化していることがわかります。
 
 赤い果実は鑑賞用にも見ごたえがあります。
 果実は(しる)があるので液果(えきか)といいます。
 花柄(かへい)は長く、関節の位置が特徴になります。
 
 果皮(かひ)をはいでみると、中には黒いかたい種子が現れました。
 種子を割ってみると、中までまっ黒でした。

 

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