第44回  キビ亜科 D Panicoideae D
 

ウシクサ連 @ Andropogoneae @

ススキ属 Miscanthus

ススキ
 学名 Miscanthus sinensis Anderss.   イネ科 キビ亜科 ウシクサ連 コブナグサ属
 秋の野草の代表的なものです。ススキの花穂は、尾花(おばな)とも呼ばれ、秋の七草の一つに数えられています。特にお月見には、ススキとだんごですね。
 静岡のだんごは、まんまるではなく、平べったくつぶした赤血球のような形をしています。このころになると、あちこちのスーパーでパックづめにして売り出されます。
 
 ススキという名前は、すくすく育つ木だから。という説があります。なにかこじつけみたいでおもしろいですね。ほかにもいくつかの説があるようです。
 このススキ、風流なことはいいのですが、大型で1〜2mにもなり、葉はかたく、鋭いきょ歯があり、うっかりつかむとナイフのように切れるので、とても危険です。とくに、葉の先の方から基の方へ手をすべらせると、深く切れるので気をつけましょう。
 
ススキの葉の顕微鏡写真です。
 葉のへりがギザギザしています。
 右側の写真は、さらに拡大したものです。
 写真の上が葉の先の方、下が葉のねもとの方です。
 かたくするどいので、気をつけないと手を切ってしまいます。
 葉の長さは、50〜80cmくらいあります。
 むかしは、ススキなどを使って屋根をつくり、そういう草をカヤと呼んでいました。いわゆる、かやぶきの屋根です。聞いたことありませんか?
 
 
 葉の観察です。
 イネ科では、いわゆる葉のことを葉身(ようしん)といいます。
 茎をぬきとって見やすくしました。
 葉身のつけねから下は葉鞘(ようしょう)といって、茎をとりまいています。これも葉の一部なのです。
 葉鞘の鞘はさやとも読みます。
 刀のさやのことで、茎のさやという意味です。
 まるで着物を着ているようですね。
 
 葉身と葉鞘のさかい目には、三日月形のりんぺんのようなものがあります。これを葉舌(ようぜつ)といいます。
 ススキとよく似たオギと比べてみてください。
 
 オギの方は、毛ばかりで、ちゃんとした葉舌はありません。
 
 1本の枝(())を取り出して、観察します。
 穂はさらに小さなまとまりの小穂からできています。
 小穂(しょうすい)の中には花があり、小花(しょうか)と呼んでいます。
この小穂から外に雄しべが出ています。
 
 ふつうイネ科のおしべは3本です。
 私たちになじみのあるイネのおしべは6本です。だから、イネはイネ科の代表にはなれないのです。グローバル的にはイネ科ではなく、イチゴツナギ科になるはずです。
 しかし、日本人にとってイネはもっとも身近なご飯の植物ですからイネ科にしたいわけです。
 
 小穂が開いてならんでいます。
 ススキの穂といわれる花です。

 ♪ すすきっぽ すすきっぽ
   ミミズクつくろか
   ウサギにしよか
   野辺の河原のすすきっぽ ♪
という歌(すすきの穂)があります。
 
 ススキの小穂は、()の短いものと、少し長いものとが2つ1セットになっています。
 小穂の根元には白い毛がたくさん生えています。
 小穂を取り出して観察してみましょう。
 
 これがススキの小穂(しょうすい)です。()の長いのと短いのがセットになっているのがわかります。
 今回は、めしべの観察はできませんでした。
 
 小穂の頭に他の毛とはちがう針のような毛が生えています。これは(のぎ)といって、ススキによく似たオギと見分けるときの有力な手がかりになります。オギには芒がありません。
 ススキの芒には特徴があります。
 根元のほうが()()がっていますね。

  
 オギ
 学名  Miscanthus sacchariflorus (Maxim.) Benth.   イネ科 キビ亜科 ウシクサ連 ススキ属
 ススキに比べ、オギの方が穂がふさふさしています。
 ススキも花が落ちて枯れる前になるとふさふさした感じがするので、いちがいにはいえませんが、オギとススキを見なれてくると、オギの方が銀色をおびた白色で輝いて見えますから、遠くからでも何となくわかるようになります。
 オギの根は根茎で横に長くのび、まるで並んでいるような感じです。ススキは1カ所から出るので(たば)になって生えます。
 
 これがオギの花序です。こういう形を穂状花序(すいじょうかじょ)といいます。
 ススキよりも毛が多く、長いですね。毛の色も、ススキよりずっと白い。
 小さく枝分かれしている1つ1つを小穂(しょうすい)といいます。
 
 穂ができたばかりのころは、小穂が写真のように開いていないので、毛で小穂がよく見えないくらいです。 
 
 ススキの小穂は、長いのと短いのがセットになっています。オギも同様ですが、軸をはさんで両側に分かれるので1個ずつに見えるかもしれません。
  
 オギの小穂です。
 大きいのと小さいのと2つ(ひと)組になっています。
 白い長い毛におおわれています。

                 
 
 左の写真は、花の終わった小穂から毛をむしりとったものです。
 見えるのは、包穎(ほうえい)です。
 種子は、包穎に包まれています。
 
 包穎をはがしてみると、中に黒っぽい種子を見ることができます。 
 
 写真は、とりだした果実です。
 果実は子房が成熟したものです。
 果実の先には、花柱の名残(なごり)が見えます。
 果実の中に種子があります。
 種子は胚珠が成熟したものです。
 
 イネ科植物の葉はほかの植物とは少しちがいます。
 茎に巻きついている葉鞘(ようしょう)という葉。(かたな)(さや)のようだから葉鞘というのです。 
 葉鞘の先は茎から離れて葉身(ようしん)になります。
 葉鞘と葉身の境目に葉舌(ようぜつ)があります。(した)(べろ)のようだから葉舌といいます。 
 
 左の写真は、オギの葉舌(ようぜつ)です。
 かすかに短い毛のようなものが確認されますが、これは葉舌が毛に変化したものです。三日月形の葉舌はありません。 
 
 写真だと、かたい毛のように見えますが、実際には、もっと小さいのですから、やわらかい産毛(うぶげ)のようなものと思ってください。
 肉眼で見ると、気づきにくいところです。
  
 写真は、オギの葉の表側です。オギもススキも長い葉が特徴です。
 葉の中央には、白っぽい太い葉脈がとおっています。少しへこんでいますよ。
 葉の水分が少なくなると、この太い葉脈が折り目になって、表面を内側にしてとじてしまいます。ドアのちょうつがいみたいですね。
 ちょうつがいって知っていますか?チョウチョのはねのように、とじたり開いたりするドアのところにつける金具のことです。  
 
 葉の裏側から見ると、葉脈は、かなりでっぱっていて、色もみどり色をしています。
 オギは、川や池など、水の近くに生えます。ススキは山でも水の近くでもどこにでも生えます。
 
 オギの葉のふちは、なめらかです。それに対して、ススキの方は、トゲのようなするどいギザギザがあります。 
 写真は、葉のふちを顕微鏡で撮影したものです。写真の上の方が葉の先で、下の方が葉の茎側です。
 ススキの葉は、逆なぜすると、つまり、葉の先の方から茎に向かってふれると、ナイフでザクってやったように切れます。気をつけてください。
 オギの方は安全です。ちょっと見ると、同じような葉なのに、不思議ですね。
   

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