第41回  キビ亜科 B Panicoideae B   

 

キビ連 B Paniceae B

キビ属 Panicum

 オオクサキビ
 学名  Panicum dichotomiflorum Michx.   イネ科 キビ亜科 キビ連 キビ属
 桃太郎でおなじみのきびだんごはキビの粉末を練って丸めたもののようです。昔話ですから真偽のほどはわかりませんが、イネほどではないけれどキビや(あわ)が食用とされていたのは事実のようです。
 身近な野草でよく目にするのがオオクサキビとヌカキビです。

 イネ科の進化は、小花(しょうか)が減少していく過程と見ることができます。
 チゴザサ連のチゴザサの小穂は2つの小花から成り立ちますが、キビ連のキビ属では1つが退化して1小穂1小花のように見えます。
 
 オオクサキビは名前のごとく後述のヌカキビより太く大きく、下方では斜めに、上方では垂直にのびます。
 小穂は垂れません。

 

 ヌカキビ
 学名  Panicum bisulcatum (Schrad.) Nees   イネ科 キビ亜科 キビ連 キビ属
 キビ亜科の小穂(しょうすい)は、2小花(しょうか)からなりますが、キビ属は第1小花が退化して護穎(ごえい)だけ残っています。
 ヌカキビは、花序(かじょ)の枝が開くと、小穂が下にたれるので一目でわかります。
 オオクサキビが直立するのに対して、ヌカキビはほふく枝を出して地表をはいます。
 小穂は下に垂れるのが特徴です。
 小穂(しょうすい)のまとまりを(そう)といいます。
 小穂はまばらにつきます。
 
 長柄と短柄の小穂の対になったものと長柄だけのものを観察することができます。
  第1包穎は、ほかのキビ亜科と同じように小さく、小穂の3分の1くらいの長さしかありません。
 
 1個の小穂です。
 もともとは2小花からなる小穂ですが、第1小花は退化し消滅しています。
  退化した第1小花に残された護穎と第2包穎で第2小花を包みます。
 第2小花は、両性ですから、おしべもめしべも備わっています。
 
 内穎と護穎の間には子房があり、その先には、濃い紫色の柱頭がついています。
 小穂も暗緑色から濃い紫色に変わることがあります。
 
 包穎と護穎を取り除くと、第2小花が現れます。
 
 第2小花の護穎と内穎のすき間から、おしべとめしべの柱頭が出ています。
 
 おしべを拡大してみます。
 (やく)は、すでに開ききってしまい花粉を見ることはできません。
 イネ科の葯は、色のちがい以外は、どれも同じように見えます。
 
 めしべの柱頭(ちゅうとう)を拡大します。
 ブラシ状になっていて、花粉と触れあう表面積を大きくしています。
 イネ科の柱頭は羽毛状のものが多いのですが、ヌカキビの柱頭はブラシ状です。
 
 キビ属の葉舌(ようぜつ)
 ヌカキビの葉舌は非常に短く、その先が毛になっています。
 それに対して、オオクサキビは、葉舌がすべて毛に変わっています。
 
 葉鞘(ようしょう)にくるまれている(そう)
 この写真からも長柄と短柄の小穂のペアが確認できます。

 

エノコログサ属 Setaria

 エノコログサ
 学名  Setaria glauca (L.) P.Beauv.   イネ科 キビ亜科 キビ連 エノコログサ属   
 エノコログサというより、猫じゃらしといったほうが通りがいいようです。
 とくに子供に親しまれています。
 エノコログサの特徴になっている花序(かじょ)の毛を刺毛(しもう)といいます。
 
 花序(穂)は、ほぼ直立しています。
 多少お辞儀(じぎ)しているものもあります。
 
 エノコログサの花序(かじょ)です。
 小穂(しょうすい)がこみ合っています。
 
 花序を拡大してみます。
 つぶつぶが見えます。
 このつぶつぶを小穂(しょうすい)といいます。
 刺毛(しもう)はエノコログサの特徴になります。
 属名のSetaria はかたい毛という意味です。

   
 アキノエノコログサ
 学名  Setaria faberi Herrm.   イネ科 キビ亜科 キビ連 エノコログサ属 
 こちらはエノコログサより一回り大きいアキノエノコログサといいます。
 花序は重いせいか大きくお辞儀(じぎ)をしています。
 
 花序を拡大してみます。
 小穂はエノコログサほどこみ合っていません。
 刺毛(しもう)は長いですね。
 
 いくつかの小穂(しょうすい)が一つのかたまりになっています。
 小穂は小さな()ということで、これもいくつかの花が集まったものです。
 エノコログサの小穂は一つの花のように見えますが、そこにはちょっとした秘密があります。
 
 小穂の()からは数本の刺毛(しもう)が生えています。
 小穂の(えい)の先から出ているのではないから(のぎ)ではありません。
 (のぎ)でわかりやすいのはカモジグサかな?
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 刺毛を取り除いて観察しやすくします。
 2つの苞穎(ほうえい)は小穂(いくつかの小花(しょうか)の集まり)を束ねるものです。エノコログサの小穂は2つの小花を持ちます。
 しかし、2つの小花のうち一つは退化して消失してしまいました。そして、その護穎(ごえい)だけが残り第3(えい)となったのです。
 退化しなかった小花はこの中にあり、護穎と内穎(ないえい)に包まれています。
 
 エノコログサの葉です。
 イネ科の葉は茎(イネ科の場合は(かん)といいます)を巻く葉鞘(ようしょう)葉身(ようしん)という細長い葉とで構成されています。
 
 
 こちらはアキノエノコログサの葉です。
 葉のひねりぐあいに注目します。
 葉の基部の裏側(うらがわ)が、葉の中ほどより先のあたりでぐるっとねじれ、裏表(うらおもて)が逆になっています。
 このような葉もあるのです。もちろんふつうの葉もあります。
 
 キンエノコロ
 学名  Setaria glauca Beauv. (L) P.Beauv.  イネ科 キビ亜科 キビ連 エノコログサ属
 刺毛(しもう)が黄金色なので全体的に黄金色に見えます。だからキンエノコロといいます。
 
 
 花序(かじょ)を拡大してみます。
 小穂(しょうすい)は白っぽい色で熟すと黄色っぽくなります。
 中軸(ちゅうじく)には短い小刺毛がまばらに生えています。
 
 コツブキンエノコロ
 学名  Setaria pallide-fusca (Schumach.) Stapf et Hubb.   イネ科 キビ亜科 キビ連 エノコログサ属 
 キンエノコロに比べ花序が短く、小穂がうすい緑色をしています。
 刺毛は紫色を帯びた褐色で、キンエノコロのような黄金色になることはほとんどありません。
 
 ムラサキエノコロ
 学名  Setaria viridis (L.) Beauv. forma purpurascens Maxim.   イネ科 キビ亜科 キビ連 エノコログサ属 
 エノコログサの品種であり、刺毛(しもう)が紫色をしたものをムラサキエノコロといいます。
 学名の forma は自然品種を表しています。人工的な品種(栽培品種)ではありません。
 
 刺毛は紫色ですが、小穂はエノコログサと同じ緑色をしています。
 基本的な性質は変わらないが、刺毛の色だけが異なっているから品種なのです。
 


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