第39回  キビ亜科 @ Panicoideae @


チゴザサ連 Isachneae

チゴザサ属  Isachne


 チゴザサ
 学名  Isachne globosa O.Kuntze   イネ科 キビ亜科 チゴザサ連 チゴザサ属
 湿地に群生(ぐんせい)するササに似た植物です。
 ササは滅多(めった)に花を咲かせませんが、チゴザサは よく花を咲かせます・

 

 
 群生していて観察しにくいので2〜3本抜いてみました。
 これがチゴザサの姿です。
 
 丸い粒は小穂(しょうすい)です。
 写真ではわかりませんが、2つの小花(しょうか)をもちます。
 花序(かじょ)の枝をみるとまっすぐではありませんね。
 波打っているような感じです。
  
 イチジクのような形をした小穂(しょうすい)の中には2つの小花(しょうか)があります。
 2本の赤いブラシのような柱頭(ちゅうとう)がとびだしています。
 小穂の()には黄色い(せん)がみられます。
 腺については、カゼクサを参照してください。
 
 長い花糸(かし)の先にはおしべがぶら下がっています。
 おしべは3本ですね。
  
 チゴザサというくらいですからササの葉にそっくりです。
 イネ科の葉は、茎を刀の鞘のように取り巻く葉鞘(ようしょう)とふつうの葉に見える葉身とで成り立っています。
 葉鞘と葉身の境目には葉舌(ようぜつ)というものがあります。
 ふつう葉舌はベロのような形をしているから葉舌という名前なのです。
 チゴザサの葉舌は長毛に変化しています。
 葉鞘の付け根は少しふくらんでいます。
 


キビ連 @ Paniceae @

メヒシバ属  Digitaria

 メヒシバ
 学名  Digitaria adscendens (H.B.K.) Henr.   イネ科 キビ亜科 キビ連 メヒシバ属
 9月ころから、メヒシバはやっかいな雑草になります。
 それは、茎のもとの方はたおれて、(ふし)から根を出してはびこるからです。
 ためしに1本引っぱってごらんなさい。ずいぶんつながっているはずですよ。

 

 
 メヒシバとよく似ているのがオヒシバです。
 オヒシバの方が穂が太くて男らしいから「オ」で、メヒシバは細くて女性らしいから「メ」がつくんでしょうね。ちなみに、ヒシバとは、日芝ですよ。
 穂の形に注目してください。
 ススキとおなじようにおちょこになったかさの骨みたいな感じです。これが、この属の属名のいわれになっています。
オヒシバの穂 メヒシバの穂
 
 穂をアップしてみましょう。
 初めは、何本かの枝がまとまって1本のように見えます。
 そして、それがだんだん分かれて指を広げたようになるんです。
 写真の右側がわかれた1本です。
 枝には、小穂が2れつに並んでつきます。
 
 メヒシバの()というのは、花のあつまりなんですよ。
 ちょうど、咲いている花がみつかりました。
 赤いブラシのようなのが、めしべの柱頭(ちゅうとう)で、茶色っぽい色をしたのが、おしべのやくです。
 イネ科の植物は、だいたいこんな感じです。
 小さいから、つい見落としてしまいますが、よく見ると、写真のようにおしべとめしべが見られますから、ぜひ本物を見てください。
 ルーペかむしめがねがあるとよく見えます。最近は、100円ショップで、キーホルダーになった、15倍ほどのつつ形のルーペを売っていますよ。
 
 枝から小穂をとりだしてみました。
 2個の小穂が一対(いっつい)になっています。一つは()がなく、もう一つは柄があります。
 小穂は、1花からできています。柄のある方にだけ、おしべとめしべがそろっています。こういうのを両性花といいます。
 
 写真は、すでに花は終わり、からっぽのやくが1つ残っています。
 2つ上の写真では、3個のやくと2つにわかれた柱頭(ちゅうとう)が確認できます。
 護穎(ごえい)には、あらい毛が生えています。
 小穂は、1枚の小さな第1包穎(ほうえい)と護穎とおなじ大きさの第2包穎にはさまれています。はさまれているといっても、第1包穎は、おまけにはりついているって感じです。
 1小穂に1花ですから、2枚の包穎は小穂をはさむというより、第2包穎と護穎で穎果(えいか)をはさんでいるといったほうがわかるでしょう。
 とにかく、むずかしいですから、くわしいことは、イネ科の解説をどうぞ。 
 
 小穂(しょうすい)()は平べったく、ふちはギザギザになっています。
 実体顕微鏡で観察してみると、ギザギザの正体はトゲだったんですね。
 小穂の柄ですから、糸くらいの(はば)ですよ。
 
 もっとアップしてみました。
 これがバラのトゲだったら(いた)いのですが、見えないくらい小さいので、さわっても、な〜んにも痛くありません。
 
 何本かの穂がたばになっていますね。これをつつむようにとりまいているのは葉鞘(ようしょう)です。
 たばになっている穂は、(かん)(穂をつけている茎のこと)がのびて葉鞘のトンネルをぬけると、開きはじめます。
 
 葉身(ようしん)と葉鞘のさかいめには、葉舌(ようぜつ)というものがあります。
 (した)(べろのこと)のように見えるから葉舌というみたいですね。イネ科の特徴です。
 葉舌は、イネ科植物の種類によって、形がちがいます。あるのかないのかわからないくらいみじかいものや、毛に変身しているものなどいろいろありますよ。くわしく知りたい人は、 をクリックして調べましょう。
 イネ科の植物を調べるときには、このことをわすれないようにしましょう。

 
 アキメヒシバ
 学名  Digitaria violascens Link   イネ科 キビ亜科 キビ連 メヒシバ属
 メヒシバとアキメヒシバは、同属だけあって非常によく似ています。
 小穂を比較すると、メヒシバのほうが細長く、先がとがっていることがわかります。
 小穂の長さは、メヒシバが3mm、アキメヒシバが1.5〜2mmほどです。
 赤いブラシのようなのが、めしべの柱頭で、茶色っぽい色をしたのが、おしべの葯です。
 
 穂をアップしてみましょう。
 初めは、何本かの花軸がまとまって1本のように見えます。
 そして、それがだんだん分かれて指を広げたようになるのです。
 花軸は平たく、小穂が2列に並んでつきます。
 花軸には翼があり、そのへりには細かいトゲがあるので、さわるとざらつきます。


チヂミザサ属 Oplismenus  
 ケチヂミザサ
 学名  Oplismenus undulatifolius (Ard.) Roem. et Schult.   イネ科 キビ亜科 キビ連 チヂミザサ属
 名前のとおりササの葉がちぢんだような感じがしますから、一目で見分けることができそうです。
 大多数のキビ連の光合成の型はC型ですが、チヂミザサ属はC型です。
 C型のほうが進化が進んでいると考えられるので、チヂミザサ属は光合成の効率はあまりよくないのかもしれません。
 
 葉は波をうつようであり、茎には剛毛が生えています。
 
 穂には小穂がブラシのようにつきます。
 このブラシの正体は、のぎと呼ばれるものです。 
 
 第1包穎の先からのびているのぎが最も長く、小穂の長さの3〜4倍あります。
 第2包穎ののぎも長く、小穂の2.5倍ほどあります。
 第1小花の護穎にもみじかいのぎがあります。
 
 ササクサ属の小穂は、1個の両性花と、数個の小花が退化し護穎だけが数枚残っています。
 ケチヂミザサの小穂は1個の両性花があり、残りの小花は退化しています。
 ピンク色の柱頭が大きく出てくるので、イネ科の中では美しい花といえるでしょう。
 

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